苺牛乳が飲みたいと言うから、自販機で紙パックのいかにも女子が好みそうなそれを買って待ち合わせ場所の屋上まで持って行ったら、苺牛乳じゃなくてそっちがいい、俺が自分用にと買った緑茶を指差されて仕方なくそれを手渡した。
 お陰でおにぎりに苺牛乳なんて大変にミスマッチな組み合わせの昼食に。南沢さんはパンだったから大体何でも合うだろうけど、正直この組み合わせはないと思う、本気で。

「あーうま」

 ちゅー、とストローで吸って満足そうに呟く南沢さん。まあいいよ、この人が喜んでるなら俺は最高に嬉しいさ。苺牛乳を飲みながら自分を納得させるようにそう心中で唱えてみる。
 と、そこで南沢さんがパンを食べながら俺のことをじっと見つめていることに気づいた。あれ、何か顔についてたりすんのかな、うわ、最悪、超恥ずかしい。鏡もなくて確認の出来ない俺が一人焦ってると、南沢さんがそれ、と苺牛乳を指差した。

「やっぱそっちがいい」
「え、」

 何を言ってるんだ、この人は。大変に我儘な先輩に呆れて言葉も出ない俺に小首を傾げてちょーだい、とまあとんでもなく可愛いおねだりを南沢さんは向けてきて、当然それを断れる筈もなくって俺は飲みかけの苺牛乳を手渡すと、南沢さんはそれを満足そうに受け取り、お礼だと言わんばかりに此方も飲みかけである緑茶を渡してきた。
 あーやっぱこっちのが好き。そう言いながらストローに口を付ける南沢さん。じゃあ何で緑茶なんて欲しがったんだと思いつつ、あれこれってもしかして間接キスじゃねと気づいた途端南沢さんの柔らかそうな桜色の唇から目が離せなくなる。

「……? 見てたってあげねーよ?」

 もう俺のもんだし。見つめられていることを不審に思ったのか牽制するように南沢さんはそう言って、俺から苺牛乳を隠すように身体を捻るもんだからそれがあんまりにも可愛くて俺はまたどきっと心臓を跳ねさせた。
 慌てて南沢さんから目を離し、俺の昼食であるおにぎりへと向かう。本当やりたい放題だ、それでもこの人にドキドキさせられっぱなしの自分は相当に惚れてしまっている。
 急ぐように咀嚼してそのせいで変なところに詰まらせて噎せる。だけども当然のことながら、南沢さんが口を付けた緑茶なんて飲めるわけがなかった。



デンドロビウムに恋をした少年。
(振り回されても好きなんだ)
fin.
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デンドロビウムの花言葉は我儘な美人、なんだそうです。
正に南沢や!












2011.12.08-  

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