小さい時から、周りにいた同い年の奴等より俺は要領のいい子供だった。
 手を出したことは割りと何でも器用にこなせて、お陰で親からの期待は大きくなったし、俺自身も褒められることが嬉しかった。

「篤志は一人で何でも出来て、本当に手もかからないし、お母さん助かるわ」

 それが母親の口癖。いつからか俺は、その言葉に母親の手を煩わせてはいけないと思い込むようになった。
 甘えたくないと言えば嘘になる。
 周りの奴等は転べば親が手を差し伸べてくれるのに、俺はと言えば泣きたいのを我慢して何時でも一人で立ち上がらなければいけない。それが何よりも辛かったのを覚えているし、周りが羨ましかった。
 それは段々と膨らんでいって、保身のために俺は彼等を見下し、自分は誰よりも“オトナ”なのだと思い込むようになった。そうするためなら何でも出来たので、身近な勉強を人一倍するようになった。それが小学2年生の頃の話。だから当然俺の周りには相変わらず同学年の子供は寄り付かず、周りは大人の集団。そんな寂しい小学校時代を送った俺は、冷たい笑顔の貼り付いたただの人形のような人間になってしまった。
 そんな風に振る舞うことが当たり前だと感じる程に。





「だからな、俺はきっともうこの先、お前無しじゃ生きていけねーよ」

 二人で眠るには少し狭いベッドの中でお互い向き合った状態で、南沢さんは昔話を始めた。

「お前は、俺の心も溶かす太陽なんだ」

 そう言って、はにかむ南沢さんの頭を左手で優しく撫でる。すると南沢さんは俺の手に自分のそれを重ねてきた。

「お前のこの手を、離したくない」

 きゅっと優しく、だけど少しだけ強く握られる。南沢さんの不安を打ち消すように額にキスを落とせば、南沢さんは何時も俺に見せてくれる、あの照れたような笑みを浮かべた。
 南沢さんが何故、こんなにも急に不安になっているのかは判らない。だけどその不安をきちんと俺に打ち明けてくれるのは、俺が南沢さんに信頼されている証拠だ。

「大丈夫ですよ、南沢さんが離してほしいって言っても離しませんから」
「ん。絶対だからな。……破ったらお前のこと殺しちゃうかも」

 いつになく物騒なことを口にしながら、南沢さんは俺の胸に顔を埋める。その肩が若干震えているように見えて、俺は先の言葉を実践するように強く強く、細い身体を精一杯抱き締めた。



震える夜の出来事
fin.
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弱ってる南沢も可愛いねって話。












2011.12.08-  

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