※微裏程度。





 俺の恋人は普通じゃない。
 と言っても、変人だとかそういう類いのものではない。何よりも可愛いし、寂しがり屋の甘えただし、それでいて少し我が儘ではあるかもしれないが、基本ねだり上手なので、俺自身も得をしていたりする。
 だからそういったところが問題なのではなかった。

「くらま、」

 夢の中であるというのに、なんとリアルな響きなんだろうか。南沢さんは甘えるような猫撫で声で俺を呼ぶ。
 そもそも何故ここが夢であるかと自覚出来るのかというと、それは南沢さんの能力に関係していた。

「なぁ、ちょーだい倉間」

 南沢さんの顔が至近距離まで寄ってきて、嗅ぎ慣れた俺の好きな南沢さんの甘い香りが俺の鼻を掠める。
 何を隠そう、南沢さんは夢魔だ。この甘い香りは男を落とすために自然と身体から放たれるものらしい。
 南沢さんは俺を上目遣いで見上げる。その瞳が妖しく光を持ち、ペロリと舌先で下唇から上唇へと舐められたそこはこの上なく扇情的で、俺が南沢さんのそれに噛みつくのは時間の問題だった。

「んっ、ふ、くら……まぁ、んぅ」

 南沢さんの唇を割るように舌を押し入れて、南沢さんのそれと絡める。待っていましたと言わんばかりのそれは積極的に絡められ、どちらのともとれない、飲み込めなかった唾液が口端を伝い落ちていった。南沢さんの時折漏れる甘ったるい声に俺の中心が熱を持つのが判る。
 夢でも実にリアルな快楽を感じることが出来るのだと気づいたのは、南沢さんに出会ってからだ。
 漸く貪っていた南沢さんの唇を解放すると、俺と南沢さんを繋いでいた銀糸がぷつりと切れる。桃色に蒸気した頬で、幸せそうに微笑む南沢さんの身体をゆっくり押し倒せば、南沢さんが早くと色気たっぷりにねだるので、危うく俺は理性を切らすところだった(もう寸前ではあるけれど)。

「……ほんとアンタ、エロすぎ」
「そう言うけどさ、そんな俺が好きなんだろ?」

 全く、この人には一生かかっても、例え逆立ちしようとも勝てはしないだろう。男を煽るためだけに生まれたというのは事実のようだ。

「まあ、そうなんですけどね」

 潔くそれを認めて、俺は南沢さんの額に軽くキスを落とす。それから頬、鎖骨、胸、腰と順にキスを落とせば、堪らないと言うように南沢さんは躯を捩らせた。
 これからの行為がどれだけ現実の俺を翌朝慌ただしくさせるのか、この可愛い生き物は知らない。無情にも夢と現実の俺はリンクしていて、毎度恥ずかしい思いをするのだ。南沢さんにとっては、きっと待ちに待った食事なのだろうけど。それが夢魔と人間の差なのかもしれない。
 とは言え、今の俺を止められる者はいないし、俺自身ですら止めることは出来ない。据え膳食わぬは何とやら、ご馳走を前にして待てが出来る程俺という人間は出来ていないのだ。
 それに何よりも、夢での逢瀬なんて誰でも経験出来るものでもないし、ロマンチックな部分もあって気に入っていないと言ったら嘘になる。

「あんまりエロいと、抑えられなくなりますからね」
「いいよ、お前になら激しくされたい」

 ニヤリと妖しい笑みを浮かべる南沢さん。それがやはりというか、必死に繋ぎ止めた理性をあっさりと断ち切ってくれた。
 まだまだ夜は長そうだ。


夢逢瀬
fin.
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不完全燃焼な気しかしませんつらい!!!
アンケの方で、夢魔な南沢、淫魔な南沢、サキュバスな南沢とのリクが多かったのでチャレンジしてみました。
しかし私じゃそんな素敵な設定を生かしきれませんでした……すみません。











2011.12.08-  

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