何をやっても目立つ人だとは思っていた。
 学年首席、教師達のお気に入り、名門サッカー部のエースナンバー、加えて顔もいいから女にはモテる、そのくせ脂ぎった親父を相手にウリをやっているだとか、噂であって本当であるかも判らないことまで飛び交うくらい、南沢篤志という人間について話題が尽きたことはない。
 人望も厚ければ、恨みを買うことも少なくはない(その恨みの大半は逆恨みであるのだが)。そんな先輩である南沢に、倉間は一度辛くはないのかと問い掛けたこともあったが、当の本人である南沢は、

「あんな奴等相手にしてても疲れるだけだからな」

と淡々と口にするものだから、その時は本気でこの人はどれだけ大人なんだと感心もした。
 自分がこの先百年経とうと南沢のような立場になることはないだろうが、もし自分が同じように嫌がらせを受けたら。きっと彼らの顔面でも殴り付けて、ありったけの感情をぶちまけるだろう。
 だからこそ、南沢篤志という先輩は少し人間味が欠けていると倉間は思った。いくら完璧である南沢であっても(完璧と言うと、彼の唯一の欠点である性格の悪さまで擁護してしまうかもしれないが)、やはり年相応らしく腹を立て自分の意見を口にしてもいいのではないか。それをしないことが大人であるということでもあるのかもしれないが、南沢はいくら年上と言えど自分と一つしか違わないわけだから、まだまだ子供でいても許される筈なのだ。
 南沢の、内なる感情を見てみたい。
 倉間が南沢にこれ程までに執着する最初の理由だった。
 それがいつの間にか恋心になるなど誰が予想しただろうか。


「お前ほんと最近俺に引っ付きすぎじゃね?」
「南沢さんが好きだから引っ付いていたいんですよ」

 呆れたようにそう口にする南沢に、倉間は真っ直ぐ本心を伝える。
 嫌いな奴とは一緒にいないでしょ、と言えば南沢はため息を吐いて俯いてしまった。
 最近、倉間は気づいたことがある。南沢という人間は酷く不器用であると。
 彼は感情が欠落しているわけではなく、自分の内を面に出すことに臆病なだけなのだ。
 それは南沢だけ見てきた倉間だからこそ知り得ることで、南沢ですら彼にそう思われていることに気づいてはいなかった。

「南沢さんは俺に引っ付かれてたら嫌ですか」

 だから、倉間は事ある毎に南沢の本心を聞き出そうとする。
 それを南沢は可笑しく思いながらも、それが倉間という後輩なのだと妙に納得している部分もあった。
 それは既に、倉間によって些細なところで変化が起きているからだとは知らずに。

「……別に嫌じゃねぇよ」
「じゃあもっと引っ付きます」
「いや、それは勘弁しろって」

 苦笑する南沢に、倉間は口を尖らせてみせた。そうやって遠慮のない後輩になるのは、南沢に倉間の前で無理をする必要はないと思わせることが目的だ。
 嫌じゃない。勘弁してほしい。この二つの、一見どういったところもない言葉だが、南沢が素直に口にするまでには倉間の相当な努力が隠されている。
 相変わらずドライではあるのだが、そこは彼の壊滅的である元々の性格であるらしい。
 次の目標は、彼の照れた顔を見ること。
 喧嘩をして仲直りというのもしてみたい。
 倉間はいつの間にやら内側で変化していた感情を、さてどうやって南沢に伝え受け入れてもらうかに試行錯誤するのであった。




互いの影響力は、大。
fin.
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よく判らないけど倉間によって変わる南沢が書きたかった。
全然書けてねーけどな!
文章力が来いよ……。










2011.12.08-  

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