くーらま。そう馴染んだ声に呼ばれて振り返れば、ぷにっと柔らかい物が自分の唇に触れて俺は慌てて身を引いた。真っ赤になっているであろう俺の顔を見て、そうさせた犯人は愉快とでも言うように笑っている。全くこの人はいつもそうだ。体裁を気にするわりには平気で外にいる間もこうして奇襲をしかけてくるし、無駄に色気があるしで、正直恋愛初心者の俺には難易度の高い相手だと最近嫌でも実感させられていた。
 ごしごしと服の袖で唇を拭ってやれば、あー酷え、なんて大して傷付いてもいないくせに南沢さんはそう口にして。余裕だらけのこの人に比べてそんなものは欠片もない自分に段々と苛々してきてしまう。
 ああ俺に、南沢さんの上を行く度胸やらテクニックやらがあれば、この飄々としたムカつく程に色気を放つ紫を押し倒して、無駄に工ロい躯を隅々まで堪能して玩んでやるのに。悲しいかな今の俺では、押し倒したところで主導権を握られるのがオチだろう。

「倉間かわいー」
「うるせーっす」

 にこにこと上機嫌で俺の頭を撫でる南沢さんに、可愛いのはアンタの方でしょと言ってやれば、ナルシストのこの人はさも当然だと言わんばかりの顔をした。この人のそんなところも含めて結局どんな南沢さんであろうと総て愛しかったりするので、いくら子供扱いされようとからかわれようと、俺はどうしても南沢さんを嫌いになんてなれないようだ。


惚れたモン負け。
fin.
---------
倉間がどうしようもなく可愛い。倉間可愛いよ倉間。










2011.12.08-  

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -