「快楽殺人ってあるじゃん。あれ、どうなんだろうな」

 折角の自宅デート中、ムードもへったくれもないその話題に、倉間はまたか、と思った。南沢がこういう、脈絡のない上に妙な話題を出すことは珍しくはなかった。が、久々に会ってイチャイチャしようと意気込んでいた自分からすると、この話題は果たして今という時間に相応しいのだろうか、そう思ってしまう。だが、そんな倉間の気持ちなんて知る由もない南沢は、一人で勝手に話を続けた。

「人を殺すことが気持ちいい奴がする殺人だろ。セックスしてる時のような感じなんだよな、つまり。ってことは、快楽殺人の犯人は勃起でもしてんのかな。あ、女もいるか」
「……まあ、気持ちいいなら、してるんじゃないですかねぇ」

 正直反応に困る。何が悲しくて殺人犯の勃起がどうたら、なんて話を恋人としなくてはならないのだ。倉間は顔をしかめたが、やはり南沢は気づかない。こうなってしまうと、自分が納得出来るまで話を止めないのは、南沢の悪い癖だった。
 一口マグカップの中身である、茶色い甘ったるい液体を含むと、南沢は微笑を浮かべた。それにドキッとした倉間だったけども、やはり南沢からはあまりにも不釣り合いな言葉が溢れる。

「じゃあさ、本当に好きな奴を殺したなら、……どうなんだろ。やっぱすげぇ気持ちよかったりすんのかな」
「さあ……俺には想像もつきませんね」

 そう言ってから、倉間もマグカップに口を付けた。南沢の物とは対照的に、此方は苦い物だ。思っていたより苦くて、倉間は更に顔をしかめる。

「大体、好きな人が恋人とか、そーゆー関係だったら、例えすっげぇ気持ちよくても、殺したら勿体無いでしょ」
「何で?」
「だって、殺しちゃったらエッチ出来ませんよ?」
「あー、成程」

 確かに、それは嫌かも。南沢は呟いた。呟いてから、倉間の首に腕を回して、自分の唇を倉間のそれに軽く重ねる。一呼吸分だけ見つめ合って、またお互い唇を重ね合った。その唇はやはり甘くて、倉間の口には丁度いいくらい、南沢は苦さに少し不満そうな顔をするものの、キスという行為自体が好きな南沢は大して気にもしていないようだ。相変わらず腕は倉間に絡み付いたままで、二人の心音が混ざり合う。

「……お前とセックス出来なくなるのはダメだな、俺も死んじゃう」
「そもそもアンタは殺人を犯す度胸もないでしょ」

 そーかも、そう言って苦笑いを浮かべる南沢を、倉間はゆっくりとソファに押し倒して、また深い深いキスを贈る。そのキスは先の飲み物よりも、本来の味がして南沢はうっとりする。くらま、キスの間にそう呟けば、倉間も先程まで感じていた不満など吹っ飛んで、もうすっかり、南沢とセックスをする、それだけしか頭になかった。

「南沢さん」
「ん」

 いいんですね、そういう意味を込めて相手の名前を呼べば、短い返事が返ってきて、倉間は笑顔を浮かべて、一人納得した。つまりは南沢なりの甘え方だったらしい、ああ不器用なこの人らしいかもなあ、そんなことを思いながら倉間は南沢のシャツに手をかけた。


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2011.12.08-  


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