おまけの虐められっこ沢



 教室に入った途端頭から何かをかけられた。冷たい。水だった。バケツいっぱいに入っていたそれをかけた人物は大笑いし、周りはくすくすと声を潜めて笑っている。気にすることはない、俺はそのまま自分の机へと向かって着席した。自分よりも何よりも、鞄の中に入っている教科書やノートの方が俺には心配だったのだ。
 だがこの態度はよくなかったらしい、リーダー格の人間があからさまな舌打ちをして、此方に物を投げつけてきた。避ける気にもなれなかった俺は、見事に顔にそれがぶつかった。痛くはなかったけれど臭かった。使い古した雑巾のようで、わあきたなーい、そんなクラスメートの声が耳を通る。

「おめぇのせいで教室水浸しなんだから早く掃除しろよ」

 じゃあ水なんてぶっかけんじゃねぇよ。そう思いながら睨み返してやったけれど、それはやはり相手を煽るだけだった。髪の毛を鷲掴みにされて、机に押し付けられる。それから雑巾を顔にぐりぐりと押し付けられ、俺は流石に目を瞑った。

「おいおいコイツのおキレーな顔が台無しじゃねぇ?」
「ぶはっ! 雑巾臭ぇぞ、南沢ー!」
「そんなに雑巾臭いなら、調度いいじゃねーか」

 好き勝手はしゃぐそいつらに俺は言葉も出ない。正しくは出さなかった。相手をするだけ無駄だと思ったのだ。
 グッと髪を引っ張られる。それから立てよ、と言われて俺は仕方なく立ち上がった。

「ほーら南沢、拭けよ、教室水浸しにしたまんまはよくねぇぞ?」

 そのまま引っ張られて俺が水を被ったところまで連れていかれ、背中をドンッと押された。不意討ちに俺は膝を折りべしゃりととそこに崩れる。
 もういい時間だった。そろそろこの辺りでお開きにしなくては、先生が教室にやってきてしまう。虐めを受けた事実を知られるわけにはいかないのだ、俺の内申のためにも。
 悔しさに拳をぎゅっと握る。だが躊躇ってる暇もない、俺は覚悟を決めた。

「……判った、拭くから雑巾寄越せよ……」
「はあ? なーに言ってんだよお前」

 ガツン。頭に響くようだった。大きな手が俺の頭を床に勢いよく叩き付けた。流石にこれは痛いな、なんて暢気なことを考えている場合じゃない。

「雑巾ならてめーの雑巾臭ぇ顔があんだろーが! てめーので綺麗にしろよ!」

 ああ成程ね。虐めの典型的パターンか。芸がねぇなあコイツら。
 俺がそんな風に思いながら、奴等に従おうとした時だった。
 アンタら何してんだよ!
 吃驚して俺は顔を上げた。そうか、教室の扉、開きっぱなしだったっけ。そこには小さな空色の少年が立っていて、小さいのに大きく見せるような気迫があった。さしずめヒーローとでも呼ぶのだろうか。そうして少年は躊躇いなく教室に入って俺の近くに立っている、同じく呆気に取られていた人間を殴り飛ばす。
 アンタらこんなことやってて恥ずかしくねーのかよ! そんな声がスカッとして、気持ちいい。
 これが、俺と倉間との出会いだった。




なんてね!
モブばっかになっちゃったけど。
うん、南沢虐めるの楽しいなあ……←
続編書こうか、どーしようかなー。
悩む。




















2011.12.08-  

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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