うたプリ | ナノ




街はすっかりイルミネーションに飾られ、お店にはサンタクロースグッズが置かれてサンタクロースのコスプレをする人もいれば子供たちに風船を渡して『Mearry X'mas!』と元気に言う人もいる。なにより雰囲気を出すために所々クリスマスソングを流しているから尚更気分があがってしまうんだろうなぁ。
私はいま何をしているかと言うと翔くんと所謂、クリスマスデートを現在している途中でやっぱり手袋をした方がよかったなぁ、と後悔している。指先が冷たい風に晒されて青白くなっていて口元に寄せ息を吐きかけた。一瞬温かくなっても冷たい風のせいでまた寒くなってしまう、マフラーも耳あてもしてるのにどうして手袋を忘れちゃったんだろう。マフラーに鼻先を埋めていると不意に翔くんが足を止めたから私も足を止める。すると翔くんが振り向いて息を吐き出すと唇から真っ白な息が生まれるそれは綺麗だと思う。

「手、寒いな」

「そうだね」

手を擦り合わせて賛同の返事を返すと翔くんはもう一度『手が寒いな』と言って来たから私はもう一度『そうだね』と返した。そしたら翔くんが眉を寄せて今度は力強く大きな声で手を差し出して来た。

「だから、寒いだろ!」

「え、ええ…?」

翔くんの言いたいことがイマイチわからない。取り敢えず翔くんの手を私の両手で包み込んで『温まって!』って願っていたら『だぁかぁらぁ違うっ!』と言われてしまった。自然と落ち込んでしまう、せっかく翔くんとクリスマスデートなのに、私は何をやっているんだろう…出かける前まではあんなに楽しく嬉しかったのに…。私が小さく謝ると翔くんは『ちがっ、』とか言ってるけれど翔くんは優しいからきっと気を遣ってくれてるんだろうと思う。なんだか申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまい胸が痛む。

「春歌!」

「は、……い?」

名前を呼ばれて俯いていた顔を上げると手を強く握られて翔くんのポケットの中に入れられる。私はわからなくて何度もまばたきを繰り返していると、翔くんは頬を少し染めながら歩きだすのを『可愛いなぁ』と思いつつ私も足を進める。

「俺は、手を繋ぎたかったんだ!…よくドラマとかであるだろ」

ボソッと小さく呟く声に確かにドラマやマンガであるワンシーンだけど、まさか翔くんがこれをしたかったなんて考えもつかなかった。だけどそんな考えをするのが可愛くて、私たちがそのワンシーンを体験してると思うと照れくさくて、私まで顔が赤くなった気がした。

「翔…くん、ありがとう。翔くんのおかげで温かいよ」

微笑んで私より少し大きい手を握り返せば、へらりと微笑み返してくれて幸せだと言う感情が込み上げてくる。去年まで家族と過ごしたことがなかったクリスマスを今年は生まれて初めて大切な人と過ごしてる、嬉しくて不思議でくすぐったくて…クスクス笑ってしまう。

「なに笑ってんだよ?」

「ううん、なんでもない」

ずっと笑っていると翔くんがつまらなさそうに唇を尖らせて『そうかよ』と拗ねた声を出す。可愛いなぁ…、そう何度目かの愛らしさを感じていると目の前に広がる大きなクリスマスツリーに目を奪われた。キラキラと色とりどりに輝き、幻想的にも見える。私は翔くんと繋がっている手に少しだけ力を込めて祈りを込めた。

「春歌?」

「サンタさんにお願いしたんです、これからも翔くんの傍にいられますようにって」

「…ばーか」

ぽすっ、と肩に顔を寄せる翔くんに馬鹿と言われてしまった。た、確かに馬鹿だけど…。すると頬に柔らかい感触とチュッという音がして横を向くとイルミネーションの光に照らされ普段よりも格好いい表情を浮かべている翔くんがいて、ドクンと心臓が跳ねた。

「んなのサンタなんかに頼まなくったって俺が離さねぇよ」

ジワジワと体の内側から来るあつい熱に私はどうしていいかわからずにただ押し黙るのです。

(春歌マジかーわいー)
(ちゃ、茶化さないで!)

2011.12.24