うたプリ | ナノ




*那月⇒天使設定
*四ノ宮分裂
*宗教的なものが入ってます
*完璧自己満足物


それは突然のことでした。
天界から見る人間界はとても不思議なものでした。天界にはないものばかりで、だけど天界の住人が持っていない醜い感情ばかりが渦巻いていて、1日中見てて飽きなかった。

人間界を見るのが日課になっていた僕はその日もまた天界から眺めていたんです。大天使クラスになると下位の天使たちに神様の教えを伝えなければいけない。だけど、それが終わってしまうと1日中退屈になる。

僕はまだまだ大天使クラスに上がったばかりで、退屈になってしまうのが当たり前の毎日。だから人間界はとても刺激的で僕に退屈という時間を与えなかった。

木々と森の住人たちに囲まれながら、大きな泉に触れると波紋が広がり水面が輝き始めた。大天使ガブリエル様から授かったブドウ酒の中に入っていた血が僕の体を巡り、それがこの聖なる泉に反応する。

僕の顔が映っていた泉が鏡のように人間界へと繋がった。人間が作ったドウロ、人間が作った淀んだ空気、人間が作った動く鉄たち、翼が入らない構造の窮屈そうな衣服…全てが僕らには理解できないもの。明らかに天界と比べたら不便そうな世界―…。

「ねぇ、ユニコーンさん。どうして人間はこんなにも愚かなんだろう」

仲が良いユニコーンさんに尋ねると腕に擦り寄ってくる。ユニコーンさんは相手の気持ちがわかる生き物。きっと僕の気持ちがわかったのだろう。

人間は本当に愚かだ。サタンの甘い誘いに乗り、罪を深め自ら命を断ったり奪ったりする。自分の手で生きにくい世界にしている。どうしてそれを理解しないのだろうか。僕には理解不能だった。

神様を信じれば、神様のお話を耳に傾ければ苦しいことも何もなく、生きやすい世の中へと変わるというのに…。

ブルルッ、とユニコーンさんが大丈夫だと言って来てくれて、とても嬉しかった。ありがとう、そう告げて泉に目を向けるとある人間に目を向けた。

僕と同じミルクティ色、髪型は違うし僕と雰囲気が違う男の人。なにか白い紙を見ながら眉を寄せている彼は、とても真剣な表情で眉間にシワを作っていた。

僕に似ている、だけど真逆な雰囲気―…。初めて一部の人間に興味を持ってしまった。そうして、彼ばかりを見つめていると胸がドキドキし始めた。

「……、…?」

これはどうしたの?

よくわからないドキドキに不安が溢れてくる。ピチャリ、再び水面に触れると先程まで見えていた人間界からただの泉へ変わった。

「…なに、これ……?」

胸に手を当てると静かになり始めたのを不思議に思っていると、大きな鐘がなり始めた。

「ああ、今日は神様が来る日でした!」

慌てて翼を広げユニコーンさんと共に神様が来られる聖堂へと向かう。





相変わらず僕は毎日泉へ立ち寄り人間界を眺めている。ただ違うのは、あの日から彼ばかりを見ていること。彼の名前は知らない、会話なんて聞こえない。わかるのは今どんな感情を抱いているか位だ。そして彼はとても強いということ。暴力で相手を傷つけてしまう、普通なら酷い人。だけど…彼が酷い人だとは思えなかった。

「…あの人は、どんな声なのかなぁ」

ポツリと呟いた。
毎日毎日彼のことばかり。どうしてかはわからない。けれど彼に対して興味が湧いているのは事実だ。彼は何が好きで何が嫌いなんだろう、彼はどんな声なんだろう、彼は暖かい人?冷たい人?

知りたいことがたくさんありすぎて、そうして僕は彼に会いたいとさえ思ってしまった。人間と天使が会うなんていけないこと。会っていいのは神様に選ばれた聖なる人だけ。

小さくため息をついた。
今までため息なんてついたことがなかったのに。こんな感情なんてなかったのに。どうやら僕は人間に毒づかれたみたいです。

帰ろうと泉に触れようとした時だ。背中に大きな衝撃を受けて泉に落ちてしまった。後ろを向いたけれど、誰かわからなくて、気が付いたら僕は固く冷たいドウロというものに叩きつけられていた。

体が動かない。視界が霞む。周りに血が流れ羽が散っている。痛い、早く天界に帰らないと…軋む体を起き上がらせようとするが激痛が走った。痛い痛い痛い痛い!

遠くから足音が聞こえているのに、もうそれさえ聞き取れなくなっていた。ああ、人間に見られてしまった。ここで終わるのかなぁ、恐怖を抱えたまま僕は意識を手放した。

to be continued...