うたプリ | ナノ






「もし、あなたに…12年前に出会えていたら…」

那月の言葉に胸が痛くなった。12年前に会っていたら、今回のような悲しい過ちが繰り返されることもなかったかもしれない。そして那月の手が汚れることもなかったのかもしれない。ぐっと歯を食い縛れば、出会った頃と同じような穏やかな笑顔を浮かべた那月がゆっくりと頭を下げる。小さく、ありがとうと呟くと頭を上げた。振り返ることもなくパトカーへと歩いていく後ろ姿は、とても小さく守るためとはいえ抱き締めた時も小さかったことを思い出した。そんな小さな体で酷なことを背負っていたなんて、気づいてやれなかった自分が許せなくて、大切な人を守るために手をかけた那月たちを逮捕しなくちゃいけない悔しさに、ぐしゃりとタバコの箱を握り潰した。