うたプリ | ナノ





「翔ちゃん、決めたんだね」

「ああ」

S.M.Sのスーツを着ている翔ちゃんは雰囲気が違っていた。普段可愛い翔ちゃんは此処にはいない。翔ちゃんの横顔はただひたすらに真っ直ぐを見ていて、その先には僕じゃなくてさっちゃんに向かっていることも分かってしまった。あの頃、僕を見つめていた優しい瞳はもう2度と此方には応えてはくれないんだろうなぁ。

街を見渡せるこの広い草原に翔ちゃん専用のバルキリーと僕と翔ちゃん。ぶわっと風が僕らを突き刺すように強くて冷たかった。

「もう行くから」

「うん」

手をひらりと振りバルキリーへと駆け出す翔ちゃんは多分。ううん、きっとさっちゃんを想ってるに違いない。バジュラが街を宇宙を襲っている為に危険な事態だと言うのに、翔ちゃんはただ1人の女の子を守る為に戦いに行くんだ。自分の身を投げ出してまで。

「翔ちゃん!」

僕は大きな声をお腹から出した。気づいてくれたらしくて僕を見つめてくれる。大きくて空色をした瞳を初めて見た時、僕は初めて恋という名前を知りました。

「砂月を助けてッ!」

返事の代わりに敬礼をして凄い速さで街を抜け出した光景を見て、明日にはもう会えないかも知れないと僕は思ってしまった。本当は悔しくて悔しくて堪らなかった。最初に会ったのは僕で仲良くなったのも僕で手を繋いだのもキスをしたのも僕が先なのに、翔ちゃんは僕よりも双子のさっちゃんを選んだ。なんて皮肉で世界は限りなく…深く想えば壊れてしまうのだろうって何度も思った。

ギュッとピヨちゃんマイクを握って僕は涙を拭った。大きく息を吸って、吐いて真っ直ぐに宇宙へ視線を向ける。この想いは絶対に届くことはない。でもこの想いを歌うことは許されるはずなんだ。

「僕がみんなを抱き締めてあげる、銀河の果てまで!」

あの頃、歌えなかった貴方の歌を今ここで唄い、此処で終わらせます。