うたプリ | ナノ





「ハンッ、ざまぁねーな」

走り去った見知らぬ男の背中に唾をかけたくなるほど気分が下がっていた。砂月は未だ慣れないミニスカートに触れるとため息をつく。自分は何故女として生まれて来てしまったのだろうか、これは幼い頃からずっと思っていることだ。自分よりも可愛い奴はいるのに、どうして…。すると突然後ろから抱き締められた。ビクッと体が反射的に跳ね勢い良く振り向くと同時に拳を作った時、抱き締めて来た人物によって振り下ろそうとした拳の動きが止まった。

「さっちゃん、また告白されてたの?」

「な…つき」

ほわほわと自分に振り二つの顔立ちをしている那月は一卵性双子で俺の兄貴でもある。そうだ、コイツこそが女になるべきだったんだ。ほわほわしたオーラを纏わせて女みたいに可愛い物が大好きでヌイグルミを抱き締める姿なんて女よりも可愛い。

「さっちゃんが可愛いのはわかるけど、お兄ちゃんとして心配だよ。さっちゃんが襲われないか毎日ヒヤヒヤしてる」

ぎゅっと胸前に回して来た腕の力が強まって少し息がしにくかったが心配されてくれることに対しての喜びと、逆に俺なんかを襲ってくる野郎なんかいるのかって言う複雑すぎる気持ちに眉間にシワができた。

「誰も襲わねぇよ、こんな男女」

「わからないよ?僕が我慢してるくらいなのに他の人が襲いたいって思わない人はいないよ」

「ハ、…?」

髪に触れ弄る那月の言葉に開いた口が閉まらなかった。なにを言ってんだ、この兄貴は。肩に擦り寄ってくるのが可愛く感じて頭部を撫でると大好きな笑みを浮かべていた。

「砂月が欲しい…、ずっと前から僕のモノにしたいと何度も願った」

唇に触れたそれは確かに柔らかかった。そして何よりも那月の綺麗な瞳が近くにあって後から気付く。俺は那月にキスをされた?