うたプリ | ナノ





今日もアイツの体は傷でいっぱいだった。痛い癖に何事もなかった様にするのがムカつく。でもそれ以上に俺を頼らないのが許せねぇ。アイツもアイツが大切にしてる奴も俺が1番守りたい存在だっていうのに、傷ついて帰って来るのをただただ指を咥えて見てるのはゴメンだ。

バキッと歯が折れた音が聞こえた気がした。俺が殴った勢いで壁に当たり崩れ落ちる男はあまりの苦痛に表情を歪めている。汚い声をあげて俺が怖いのかは知らねぇけどガタガタ震えてる、なァ、お前が那月に手をあげた時、那月は一体どんな表情を浮かべてどんな気持ちだったと思う?なァ、お前が砂月に手をあげられた時、砂月は一体どんな表情を浮かべてどんな気持ちだったと思う?分からねぇよなぁ、分かるはずがない。

「おい、」

俺が話し掛けると野郎2人は喉を絞った様な声をあげた。もう1人は痛すぎて気絶をしているみたいだけど今はどうだっていい。近づいてしゃがめば目が合う。悔しいんだろ、自分より身長が低い野郎にやられてるのが悔しくて悔しくて仕方ないんだろ。

「い゛―…!?」

髪を掴んで顔を上げさせれば腫れ上がった醜い物が映る。砂月は何時も見てんのか、こんな醜くてキモチワリィ物を。

「誰だ、最初那月に手ェあげた奴」

「お、ぼえてねぇよ。そんなこと!それよりもう許してくれ、来栖!二度と四ノ宮には手をあげねぇから!!」


ぴくンッと指が反応した。掴んでいた髪を離して確かAクラスだったか、ソイツの胸蔵を掴んで鳩尾に拳を当てればウルサイくらいに叫ぶ声は汚なかった。あまりにもうるさかったんで首に手を回して力を込める。苦しそうに身動ぎ酸素を求める金魚みたいに顔を真っ赤にして…

「覚えてない?許してくれ?おっまえ馬鹿だなー」

「う゛…ぁ゛あ゛あ゛ア゛!」

「那月がそう言った時、お前らは止めなかったんだろ?なら俺が止めるはずがねぇだろうがっ!」

ビクビク震えるのを見て手を離してやれば面白いくらいに咳き込んで息を必死に吸い込む。あーあ、そんなにしたらむせるってのに、やっぱコイツらは馬鹿だ。

「他の奴らにも言っとけ、次アイツらを傷つけたら…」

足をあげて喉仏部分に軽く当てた。

「殺してやるよ、わかったな」

手を添えてやがるから直接じゃないのが気に食わないけど、圧迫されて苦しいんだろう。それとも怖くて震えてんのか?グッと力を入れれば必死に足を退けようとさせる姿は滑稽すぎる。足を退けて地に体を落としている3人は情けない程に怯えていて確信した。アイツら絶対に那月と砂月に手を出さないって、多分出すとしても俺の方にくるんだろうな。

両拳に血が付着してジンジン痛みがあった。折れてはないみたいだけど、砂月はこれを今まで何度感じていたんだろう。そして自分を守ってくれている砂月に対して那月はどう思っているんだろう。多分同じ気持ちなんだけど交わらないんだと思う。簡単で実は難しい其れを俺はただ傍で見ていることしか出来ないんだ。


「意味がなかった。なんてことは…無いよな…?」