うたプリ | ナノ






眼鏡が外れただけで俺になる那月は、本当に弱くてちっぽけすぎる存在だ。例えるなら道端に咲いている一輪の花、踏まれてはグシャグシャに、抜かれると無残に。昔みたその光景は、まさに那月そのものだと感じた


「アイツは俺が守る。だからチビ、お前は必要ねぇんだよ」

手の中にある眼鏡
那月が今日、あの女の行動で傷ついた。それは俺からしたらほんの些細な事だが那月にとってそれは胸が抉られる様な事だった。部屋に戻った那月は泣いていた、あの時みたいに。グスグズ、その時にチビが帰ってきやがった。声を張り上げて、肩を掴んで問いただそうとするチビに那月は何も言えなかった。無理矢理聞いたって那月が話せるわけがねぇ。言っただろ?コイツは弱いんだってよ

「何でだよ、俺だって那月を守れる」

「ならなんで那月は泣いてる」

その問いかけに何も返さないチビ、ほらな。守れるわけがない。那月を守れるのは俺しかいねぇんだ。

「那月は不安なんだ、不安で怖くて堪らねぇ…」

胸の奥がズクズクする
那月が叫んでる、怯えてる

「砂月」

考えにふけっているとチビが近寄って来て頬に手を添えて来た。突然すぎる行動に目を見開き戸惑う

「なっ、さわ、るな!」

「お前も不安で怖いんじゃねぇか?」

理解出来なかった
俺が?笑わせるなよ
今まで1度もそんなことはなかった。怖いとか不安だとか、そんなの感じたことがない。チビにそう教えてやったのに、聞いていないのか力強く抱き締めて来やがった。抵抗するのに、何故か振り払えない。どうして…

「泣くな、砂月」

胸がズクズク疼く
どうした、那月
俺が守ってやるから泣くな

「安心しろ、俺がお前らを守るから」

胸が、苦しい
ヤメロ、訴えるのにチビは俺の目尻を拭ってくる。どうして…、振り払えないんだ。

「砂月、大丈夫だ」

そして気づく
チビの肩にシミが出来ているのを。ああ、

「泣いてんの、は…お、れ…か?」