うたプリ | ナノ





暖かい布団の温もりが今の寒い時期にはとても天国だと思わせる効果がある。久しぶりの休日を布団の中で満喫していたら包丁がまな板でリズムを刻みながら当たる音が耳に入って来た。寝起きで意識が朦朧とする中、重い瞼を開けボーッとしていたら鼻を擽る、とても腹を空かせるような匂いがして暖かい布団から勇気を振り絞ってベッドから降りるとぶるり、体が震えた。時計を見ると時刻は朝の11時56分、マニキュアをとってしまったのを思い出しながらボサボサの髪を放置しつつ頭を掻いて、ふらふらとリビングに足を運ぶ。とても良い匂いが肺一杯に溜まり俺から見える小さな後ろ姿に抱きついた。ひゃっ、なんて女らしい声を上げた春歌は俺だとわかった途端に笑顔になって、おはようございますと言ってくれる。俺は春歌の頭に擦り寄りながら短く、おはよと返した。今更気付いたが昼飯が出来終わっていたらしい、テーブルに置かれた愛が籠もっている食事たちを眺めていたら腕の中にいる春歌が俺を見てクスクスと笑う。

「なに笑ってんだよ?」

「寝癖がついてるから、可愛くて」

手を伸ばしてくるのを横目に触れさせながら俺はジッと春歌を見つめる。頬を染め口元を緩ませつつ目を細めながら、まだシャイニング事務所に入りたての頃渡したお揃いのヘアピンを未だに愛用してくれていて明かりに共鳴して光る。額にキスしたら相変わらず初々しい反応をする、本当にあの頃と変わらない。

「翔くん…?」

春歌に名前を呼ばれるだけで、こんなにも胸が暖かくなって幸せに満ちあふれるだなんて出会って間もない頃の俺は知るよしもしなかった。心配そうな視線を向けてくる春歌に俺はだらしない緩みきった笑みを見せながら、あの頃と変わらない春歌に対しての気持ちを伝えるのだ。

「春歌マジ可愛い」

そして昔と変わらない反応を見せてくる目の前にいる妻をキツく抱き締め堪能するのが、俺の休日の過ごし方。