「どうして、隠してたの…」
普段賑やかな僕と翔ちゃんの部屋は今日に限って冷たく静かだ。目の前に座ってる翔ちゃんは問いかけられて何も言わなかった。どうして、教えてくれなかったの?そう問いかけても返って来る言葉は『ゴメン』と言う僕にとっては納得いかないものだった。
「僕は謝って欲しいんじゃないんです、どうして同室で親友でもある僕に、病気のことを教えてくれなかったんですか?」
僕、そんなに頼りない?
「お前に心配かけたくなかったんだよ」
翔ちゃんの言うことは分かる、分かるのにやっぱり"どうして"って気持ちが強くて納得いかないんです。僕は翔ちゃんのことが大好き、そして親友だと思ってます。部屋だって一緒だし今までデュエットもした。この学園内で誰よりも翔ちゃんのことを理解して誰よりも翔ちゃんのことが大好きだって言える自信があったのに、こうも簡単に壊されるだなんて思ってもいなかった。
「翔ちゃ、どうして…」
視界が歪む。次には目の奥が熱くなって鼻がツンッ…と痛み出して。可愛らしい翔ちゃんは目を見開いて僕を見てきた。
「どうして、病気の事を1番にハルちゃんに言ったんですか?」
僕の中では翔ちゃんが1番大切で大好きな存在なのに、翔ちゃんの中では僕が1番じゃなくてハルちゃんが1番大切で大好きな存在なんだよね。わかってた筈なのに、悲しくて嫌で僕は翔ちゃんの肩を掴んで崩れ落ちてた。
「那月、ごめん」
「しょ…ちゃあんっ」
僕より小さな手で背中を擦り頭を撫でてくれる。でも、これもハルちゃんにしてたんだって考えたら此れさえイヤ。
「翔ちゃんは僕のなのにっ、ハルちゃんに盗られるなんてヤだ。ヤだよ、翔ちゃん!」
僕の翔ちゃん。翔ちゃん大好き。ハルちゃんよりも僕の方が翔ちゃんのことを誰よりも大好きなんですよ。だから僕から翔ちゃんを奪わないで、お願いだから。
あの子は君の事なんて何も知らない、僕が1番誰よりも知ってるんだから