「よっ、那月!」

「翔ちゃん!会いたかったですッ」

目の前を横切って行くアイツはあんなにも遠い存在だったっけ?楽しそうに話すアイツと那月は本当に恋人の様で胸が痛く張り裂けそうだった。ギュッと胸元にあるペンダントを握り締めた。恋なんか知らなければ、こんな別れなんてモンは来るはずがなかったんだ。俺が那月みたいに女らしく可愛らしい物が大好きで守ってやりたくなる人間だったら、もしかしたらアイツの隣は俺が立てたのか?

「さっちゃん!今から翔ちゃんと出かけてくるねッ」

「お、いコラ那月!デカい声出すんじゃねぇ!!」

幸せそうな那月の笑顔。耳まで真っ赤に染めて叫ぶアイツの横顔、幸せそうだった。歩きだした2人を横目で見ていると咄嗟にアイツの腕を掴んでしまった。必然的に立ち止まる2人、不思議そうに見つめてくる2人。行くな、行かないで。そんな想いが届くワケがない

「砂月、何も用がねぇーなら離せ」

ズキリと痛む。どこが?胸が、痛い。もう2度と触れられないとわかったとしても、せめて最後に強く抱き締めて欲しかった。強く強く息ができないくらいの抱擁が欲しいのに、それさえ許されることはない。この想いは届かない。別れを告げることしかできねぇのか!

(希望のない奇跡を待って、どうなるんだ?)

問い掛けられて立ち止まる。振り向いてくれる確率なんて0に等しいのに、待ってて何の意味があるんだろうか。俺のすべてを受け入れ優しく包んでくれた両手が救いだったのに、世界がたった今崩壊した。

掴んでいた手を離して教室へと向かう。アイツが居たから俺は今まで歩いてこれたって言うのに、お前は那月を選んだ。馬鹿だな、最初から俺を選ぶはずなんかないのに、期待していたなんて…。

ボタボタと涙が溢れだす。こんなの初めてで止め方なんか知るはずがない。 愛したかった、愛されたかった。すべてを共通したかった、俺を選んで欲しかった。でも那月も同じくらいに好きで傷つけてまで奪いたくなんか無い。

何度も何度も別れの言葉を口に出して自分自身に言い聞かせて、アイツに恋をする資格なんかないんだと思うしかなかった。強さが欲しい、この想いを押さえ切れるほどの強さが今は欲しくてたまらない。

「ッ―…、あ、ぁあああ゙!!」

声を上げて今はただ泣くことしかできない俺をあの日みたいに優しく抱き締めてくれる奴はいない。なんて笑える物語なんだろうか

Diamond pastel
(願うならもう一度抱き締めて、ひとりなんかじゃないって囁いて!)


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