「それで、なんであたしはここに?」
そりゃあ、もちろん毒味役?
「郁はちょっとやそっとじゃ倒れないでしょ?」
にこりと微笑めば、郁の頬にたらりと汗が伝っていくのが見えた。
あれから悩みに悩んで悩んで。
結果、シンプルイズベストということに収まりハート型のチョコに決めた。
決まったのはいいが、自分で言うのもなんだが、その、実は私は料理が下手くそだったりする…。
過去に何度か被害にあっている郁はそれはもう必死の形相だった。
「あ、あ〜!あたし、そういえば明日は大事な用が!」
「郁の用事というのは全くの嘘で、これから明日の夜まで完全フリーだということは麻子の調べで分かってるのよ。」
「柴崎!なんてやつなの!」
持ったオタマでぺしぺしと頬を叩けば、郁は観念したようにがくりと肩を落とした。
「で、なんでオタマ持ってるの?なに作るの?」
「ハートチョコ。」
「え、オタマいるっけ?」
「え、いらないの?料理って言ったらオタマでしょ?」
「え?」
「え?」
ハートチョコの作り方
もう既に前途多難の予感がします。