そんなこと言うもんじゃない。
そう言って差し出したチョコを堂上教官はやんわりと押し戻した。
「どうして、ですか?」
「それはおまえが誰かの為を思って作ったものだろ。」
言われて胸にはほんのりとした罪悪感。
誰よりも可愛くなるようにコーディネートしてくれた麻子、ぐったりとなるまでチョコ作りに協力してくれた郁。
二人とも私の一世一代の大勝負の為に協力してくれた。
「でも、彼には渡せませんでした。」
このまま持って帰るのは、二人にも申し訳なくて到底できない。
懇願するように見上げると、堂上教官は一瞬だけ息を飲むとぐっとこらえるように拳を固く握って言った。
「それでも俺はそのチョコは受け取れん。その渡そうとしたやつへの気持ちがこもったプレゼントは、な。」
「そう、ですか…。」
「では、一緒になら食べてくれますか?」
「なに?」
「彼への気持ちごと食べてしまって、そして受け入れて、次へ進む為の力にしたいんです。でも、一人じゃ怖くてそんなことできないので。」
情けなく眉を下げる私に、堂上教官は優しい顔で笑った。
「今回だけだぞ。」
甘くて甘くて切なくて
食べたハートチョコはやたらと甘かった。