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やっとのことでLHRが終り、生徒が皆一様に席を立ち始めた。
ピーんポーンパーンポーン
そこへ放送の合図の音が鳴った。
《先生方にお知らせします。只今より、緊急職員会議を行いますので、至急職員室へお戻りください。また全校生徒は各自教室に戻り、指示があるまで下校しないでください。》
放送後、モロキンが出て行ったことを確かめ皆は再び口を開いた。
突然の緊急職員会議、更に近くから聞こえてくるパトカーのサイレンに教室は騒然とした。
だがそんなことになっていてもあずみはさして気にしていなかった。
転校生に視線が釘付けで、おまけに何やらキラキラと輝いていた。
「ね、ね、ね。」
千枝と雪子が二人で話を始めたとき、あずみは斜め前へと体を乗り出して転校生の肩をツンツンとつついた。
「…俺?」
「ん、オレオレ。キミと私、仲間!」
肩をつつかれ振り向いた転校生は、意味がわからないあずみの言葉に首を傾げた。
「ん〜、えっとね、私も"腐ったミカン帳"!」
にこにこ笑顔で言う言葉ではないと思うが、あずみの可愛らしい仕草に転校生は釣られて笑った。
「そうか。仲間、だな。」
「いひひ!ナカーマ。」
「俺は鳴上悠。君は?」
「ん〜、橘あずみ。」
あずみの目が輝いていたのはきっとこれが原因だろう。
あの勇気ある発言があずみのお気に入りポイントにストライクしたらしい。
「なるちゃんもはなむ〜もイケメンねぇ。」
不意にあずみがもらした言葉に鳴上が口を開きかけたとき、またもや放送の合図がなった。
《全校生徒にお知らせします。学区内で、事件が発生しました。通学路に警察官が動員されています。出来るだけ保護者の方と連絡を取り、落ち着いて、速やかに下校してください。警察官の邪魔をせず、寄り道などしないようにしてください。繰り返し、お知らせします…》
事件…
その言葉に再び教室は騒然とした。
見に行こう、と好奇心で教室から飛び出していく者もいた。
それぞれが帰り支度を済ませ、バラバラと人が帰っていく。
「ん〜、保護者ねぇ。」
「…?あずみは帰らないのか?」
「ん〜、帰るよ?」
「じゃあ一緒に帰らないか?」
「なるちゃんのお誘い!いいよ!」
ネコ耳フードを揺らして立ち上がったあずみはリュックを背負うとにこりと笑った。
そこへ、千枝と雪子がやってきた。
「あれ、あずみ、鳴上君と帰んの?」
「ん〜、今日ナカーマになったの。」
「あはは!またナカーマできたの?鳴上君も大変だねぇ。」
千枝は笑いながら背の低いあずみの頭を撫でた。
そこからトントンと話は進んでいき、その日は四人で帰ることとなった。
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