page.3
目の前には思いっきり頬を膨らませ、涙目で怒るあずみ。
捜査隊のメンバー全員が何故かその前に正座をさせられていた。
「私も!張り込みしたかった!」
「いや、それは…。」
「はなむーが!橘はりせちーと仲良しだから一緒にいてくれって言うから!」
「き、今日だけってお願いしました。」
陽介が小さく挙手をする。
「なのに!皆で犯人を捕まえたって!その頃私は!」
「…豆腐屋で、アイス食ってました!」
「え、これ挙手制?」
完二が大きく挙手をして言い放つ。
雪子が小さく呟いたが、それは無視された。
「うぐぐぐ。違うの!問題はその後!」
「騒ぎに気付いてあずみが追いかけてきました。」
今度は雪子が小さく挙手をして、発言した。すると、今まで威勢の良かったあずみの目からボロボロと涙が零れ落ちた。
「ふぐっ…そ、それで!その後!」
「…りせちゃんが、いなくなった?」
千枝が小さく挙手をして呟く。
あの後、張り込みをしていたメンバーの前に犯人と思しき怪しい人物が現れた。
その場に居合わせた足立とこの犯人を追いかけ見事捕まえることに成功したのだが、豆腐屋に戻るとその僅かな間にりせは忽然と姿を消していたのだ。
周辺をくまなく探したが見つからず、その日の夜マヨナカテレビには鮮明な映像が流れたのだった。
千枝のその発言で遂に崩れ落ち、あずみは涙を更に溢れさせた。
「私が!あの時、一緒にいれば!!」
どれだけ後悔しても足らない。
嗚咽を零すその背を悠がそっと撫でた。
「あずみは自分が許せないんだよな。…大丈夫だ。助けに行こう。皆で。」
「な、なるちゃん…。」
少し落ち着いて周りを見渡せば、正座をしていた皆が優しく笑っていた。
皆に怒っていたわけではない。
自分自身が許せなくて、それをどこにぶつけていいかわからなかっただけなんだ。
「ごめんね、ごめんなさい。」
「なーに謝ってんだよ。」
「あずみは馬鹿だからな。」
「それ、完二くんには言われたくないと思うよ。」
「あずみ、皆で行こう?クマくんのところ。助けようね。」
ああ、本当に。
この人達が大好きだ。
私の秘密を受け入れてくれて、居場所を与えてくれた。
私も、誰かにとってそんな人になりたいな。
りーちゃん、助けに行くよ。
待っててね。
[ 60/61 ][*prev] [next#]