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「静かにしろー!」

ガラリと音をたてて入ってきた奴は入室早々、怒鳴り散らした。

一瞬にして教室中が静まった。

モロキンが怒鳴ったということも影響したとは思うが、一番の理由はきっとモロキンの隣に立つ男子生徒だろう。

フワフワの淡いグレーの髪に、高い身長。何よりもその、整った顔立ち。

きっと誰もが目を惹かれているのだろう。

だが、そんな中例外がここにいた。


「今日から貴様らの担任になる諸岡だ!」

「ん〜、そんな大声出さなくても聞こえてるっつーの。」


あずみだ。

彼女は転校生よりもモロキンが気に食わなくてしょうがないらしい。

ボソリと呟いた声は前の席の千枝に聞こえたらしく、僅かに肩が揺れていた。

絶対に笑うのを堪えてるな。

「いいか、春だからって恋愛だ、異性交遊だと浮ついてんじゃないぞ。ワシの目の黒いうちは、貴様らには特に清く正しい学生生活を送ってもらうからな!」

「ん〜、それはモロキンが言える台詞じゃないね。」

再び千枝の肩が揺れた。

「あー、それからね。不本意ながら転校生を紹介する。ただれた都会から、へんぴな地方都市に飛ばされてきた哀れな奴だ。いわば落ち武者だ、分かるな?女子は間違っても色目など使わんように!」

「ん、ひがみ決定だな。」

千枝の肩が小刻みに揺れる回数が増えた。


「では、鳴上悠。簡単に自己紹介しなさい。」

あずみはそこでやっと転校生に目を向けた。

ふと目がパチリと合った。気がした。


その瞬間、話をふられた男子生徒はモロキンを見てこう言った。


「誰が落ち武者だ。」

「!」

「む…貴様の名は"腐ったミカン帳"に刻んでおくからな…」


あずみの目が煌めいた瞬間だった。



その後、始まってしまったモロキンの説教を千枝が上手く遮り、転校生は千枝の隣、つまりあずみの斜め前の席へとついた。








そしてその放課後…。

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