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やっとの思いで影を倒したが、形を完二の姿に戻した影はそれでもなお向かってこようとしていた。

「ボクを受け入れて…受け入れてよおおおお!!」

悲痛に叫びながら、両手を広げる。
あずみが駆け出そうとした瞬間、隣を何かが全速力で駆けていった。

「みーちゃん!!」


ガツン!!!
鈍い音が響き渡り、床に倒れこんだのは完二、ではなく影だった。

荒く肩で息をしながら、完二が拳を握りしめていた。

ほっと息を着くと同時に全身の力が抜け、あずみはその場にズルズルと座り込んだ。

「たく、情けねえぜ…。こんなんが、オレん中に居るかと思うとよ…。」

「完二、お前…。」

「知ってんだよ…テメェみてえのがオレん中に居る事くらいな!男だ女だってんじゃねえ…。拒絶されんのが怖くて、ヒビってよ…。」


完二の拳が、震えている。


「自分から嫌われようとしてるチキン野郎だ。」

「それも含めて完二だ。」


いつの間にかあずみの隣まで来ていた悠は、そっと立たせると完二をしっかり見つめてそう言った。

「フン、なんだよ…。分かったような事、言いやがる…。」

「みーちゃん…。」

「あずみ…。オレは、オレはあんな事、本当に思っちゃいねぇ。でも、心のどこかでほんのちっとだけ疑ったことがあるのは事実だ…。」

「うん…。いいんだよ。それでも、私にとってみーちゃんはみーちゃんだから。」

あずみがそう言うと、完二はそっと頷いて影に向き合った。


「テメェがオレだなんて事ぁ、とっくに知ってんだよ…。テメェはオレで、オレはテメェだよ…クソッタレが!」


影がゆっくりと頷く。
どこか嬉しそうな顔をしていた影は、淡く優しい光に包まれて完二の新しい力、タケミカヅチへと姿を変えた。





「さ、みーちゃん。帰ろう?ね、隊長。」

「ああ。帰ろう。」

「おお。」













完二を救出後、薄暗くなり始めた河川敷を二人は歩いていた。

「なぁ、あずみ?」

「ん〜?なぁにー?」

少し前を猫耳フードをヒョコヒョコと揺らしながら歩くあずみに、ふと問いたくなった。

「完二のこと、好きなのか?」

「うん、好きだよ!」

「…それは、どういう好きなんだ?」

「どういう?」

彼女はピタリと足を止めて不思議そうに此方を振り向く。大きな目をまんまるくして、首を傾げていた。

「ん〜、どういうって普通に、だよ!堂島さんも好き!菜々子ちゃんも好き!はなむーも千枝も雪子も好き!」

そして、タタタッと走ってくると腕を強引に組んでニカッと笑った。


「なるちゃんは、大好き!ご飯美味しいもん!」














「なるほど。とりあえず、一歩リードか。」

「ん〜?」

「いや、なんでもない。」



やはり胃袋で掴むしかないか、と思う悠であった。






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