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あれから数日経ったものの、完二の捜索は難航していた。
雪子班からの連絡もないのだからきっとあちらも難航しているのだろう。
今日は張り込みするとかなんとか言ってたっけ…。
張り込みって何?
尾行とかするのかな?
「うー!!!めっちゃあっちの方が楽しそうー!!」
「ゴラアアァ!ぜってー、ちげーかんな!」
「わあ!」
そろそろ退屈すぎて叫び出しそうになったとき、突然降ってきた怒声にあずみは飛び上がった。
別の意味で悲鳴があがってしまったのは致し方ない。
飛び上がった拍子に落としてしまった荷物を持ち上げ、土をはたき落とす。そして、怒声の聞こえた方に顔をむけると途端にあずみの顔は華やいだ。
「みーーーちゃーーーん!!!」
「ちょっと待ちや…アァ?」
「見つけたー!!!」
「え、あずみ?」
チクチクと音が鳴っているような気がする手元をじっと見つめる。
どんどん戻っていくウサギさんの姿にあずみはとてもご満悦そうにネコミミフードを揺らした。
「…まさか、あんたが針と糸を持参してきてるとは思わなかったぜ。どういう風の吹き回しだ?」
「みーちゃん探してたから!」
「アァ?俺を…?」
そう!と満面の笑みで頷くあずみを見て、完二は小さく溜息をつくのだった。
その日の夜。
夕方から降り始めた雨は深夜まで降り続いていた。
「つまり、巽完二は何も変わったことはないって言ってたんだな。」
「ん〜、そうだよ!」
やはり、手がかりはマヨナカテレビしかないのか…。
お風呂上がりで体が冷えないようにと悠が作ったミルクティーは、暖かそうな湯気を立てている。それを慎重に啜るあずみは、安心しきった表情だ。
友人が狙われていると知って、彼女はどれほど不安だったのだろう。
今更になってそこに気づいた悠は心が締め付けられる思いだった。
直接、彼の無事を確認したあずみは今きっと安心しきっている。このまま事件を未然に防ぐことができればいいのだが…。もしものことがあれば、彼女はまた傷ついてしまう。それだけはなんとしても避けたかった。
マヨナカテレビを待つ時間、悠とあずみがお互いの捜索報告をしていると悠の携帯が着信を知らせた。
「あのね、完二くん、家に居ないんだって!」
それは、最も聞きたくない言葉だった。
その日のマヨナカテレビには、非常に鮮明な映像が流れた。
ゴトリと音を立てて絨毯に転がったマグカップは、空っぽだった。
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