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ところで、何故あずみがこんなとこにいるのかというとそれは数日前に遡る。
あずみの言う「みーちゃん」なる者は八十神高校一年、巽完二だということがマヨナカテレビで判明した。
早速、翌日の教室では自慢げに語るあずみの姿があった。
「ほら!みーちゃんだったでしょ!」
「いや、普通あんな強面のやつがちゃん付けで呼ばれてるなんて想像できねーって…。」
「は、花村の言うとおりだわ。さすがにあずみの交友関係がそこまで広いとは思わなかったよ…。」
千枝までもが顔を引きつらせるなか、悠は妙に納得したような顔をしていた。
「巽、たつみ、たつみー、みー、みーちゃん…なるほど。」
「いやいや感心してる場合じゃないから鳴上くん!」
「それにしても、私もあずみが完二くんと知り合いだったなんて知らなかった。」
雪子が不思議そうな顔をするのも無理はない。だって誰にも言ってこなかったのだから。
「ん〜、みーちゃんね、小さい頃すごく恥ずかしがり屋だったの。だからあんまり私とお友達だってこと皆に知られたくなかったみたいで、内緒にしてたの。あ、でも今は違うよ?」
にっこりと笑うあずみの顔はとても嬉しそうで、本当に仲が良いのだとわかる。
悠の中で何かがメラッと一瞬燃え上がった様な気がした。
「その、巽完二とは今も会ってるのか?」
「…ん〜、たまに。でもここ最近はバタバタしてたから会ってないや。」
「そうか…。じゃあ、やっぱり最近の彼の様子を調べる必要があるな。」
マヨナカテレビに写ってしまった以上、次に狙われるのはきっと彼だ。
何とかして事件を食い止めるため、そして犯人への手がかりを得るために立てられた作戦は至ってシンプルなものだった。
実は巽完二の実家は染物屋さんをしているらしく、旅館関係でつてのある雪子と残りのメンバーでその染物屋さんに調査をしに行くことに。
それと同時進行であずみは別働隊として巽完二を探し、話を聞き出すということだった。
「え、橘だけで行動させるのか?」
あの強面と二人で会うのか、とあからさまに心配そうに顔を歪めたのは陽介だった。悠は少し眉にシワを寄せているだけだったが、きっと同じことを言いたかったのだろう。よく見れば千枝までもが、オロオロとしているようだった。
「その方が話しやすいんじゃないかな。」
「みーちゃん、恥ずかしがり屋なの。」
雪子とあずみがそう言うならばと納得せざるを得なかったが、やはりどこか心配げな三人だった。
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