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「あんらま〜…」
堂島宅に居候を始めて数日。
今ではすっかり家族団欒の時間にも溶け込んだあずみが、テレビを見て呟いた。
テレビの中では見覚えのある制服を身につけた青年が、テレビカメラに向かって啖呵をきっていた。
ありゃま…
青年の顔には一応モザイクが入ってはいたが声までは加工されておらず、わかる人には誰だかわかってしまう仕様になっていた。
わかる人にはわかる。
そのわかる人の中には、この家の家主である堂島も含まれていた。
「この声…。あいつ、まだやってんのか…。」
知り合いのような口ぶりに、その場のみんなが堂島を振り返った。
「お父さん、しりあい?」
「う〜ん、まあ、仕事の知り合いだな。」
「まあ、あの子ならパパさんたちの厄介にもなっちゃうよね〜。」
「あずみも知ってるのか?」
悠が不思議そうに聞いてきたので、説明をする。
「うん。この子は巽完二。ケンカがすんごく強くてね、この辺りの暴走族はみーんな完二くんがやっつけちゃってたの。それも中3で!結構有名人なんだよ?」
そう言うあずみは何故か誇らしげで、悠は不思議に思いながらもあぁ、と納得したように軽く数回頷いてテレビに視線を戻した。
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