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元々、親戚とは疎遠だった為あずみは今の今まで天涯孤独で生きてきた。
だから、いつしか彼女にとって"おかえり"と"ただいま"は特別になっていたのだ。
それを察した悠はしょうがないな、と微かに笑みを浮かべながら小さく呟いた。
「…わかった。とりあえず、ご飯にしよう。」
「ご飯!?やったー!」
あずみが喜ぶのなら、まぁいいか。
あずみは居間へと続く短い廊下を、来た時同様に駆けていく。
家族の交通事故の事で堂島と面識のあったあずみは、堂島の計いによってこれからこの家に住むこととなった。
ぐったりとしたあずみを家に連れ帰った時は、それはそれは大変驚いていた。
しかし、家族を失ったという癒えることのない心の傷を抱えるあずみに堂島は何を感じとったのか、彼女に"うちに来い"と言ったのだ。
どうしていきなりそんなことを言ったのか詳しい理由は分からないが、あずみと菜々子が幸せに笑えるのなら、それでいいと思う。
「菜々子ちゃん!ご飯だってー!」
「わーい!菜々子、お兄ちゃんのご飯好き!」
ついでに言えば…
辛い過去を持ちながらも、今の自分とちゃんと向き合った。
そんな彼女の嬉しそうに菜々子と笑い合うその笑顔を…
俺は守りたいと思ったんだ。
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