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「ただいま。」

家に帰り着いた悠は、いつもの言葉を口にする。

普段ならば菜々子の返事が返ってくるのだが、今日はいつもとは違うパタパタと軽い足音が居間から駆けて来た。

「おかえりなさい!」

だいぶデカめの俺の服を引きずらないように、両手でズボンを掴みながら駆けて来るその姿に、思わず頬が緩むがそこを何とか堪える。

「ただいま。でも、あずみ。起き上がったらダメって言っただろ?倒れたのはまだ昨日のことなんだからおとなしく寝てろ。」

もう一度"ただいま"と言うと、あずみは心底嬉しそうに笑った。

しかし、間髪を入れずに始まった俺の説教に彼女はシュンとうなだれてしまった。

「うあ…ごめんなさい…。でもでも、誰かに"おかえり"って言うのすごく久しぶりだったから…。」

言いたかったの、と言ってあずみは俯く。


千枝や雪子から聞いた話によると、彼女の両親と今ではあずみのペルソナとなったちとせは、6年前に交通事故で亡くなってしまったらしい。

たまたまその車に乗っていなかったあずみだけが、取り残されたのだ。

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