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幼馴染みである千枝と雪子は、あずみの性格や身の上を知っているからこそ、悠の言葉が正しいことを感じていた。
黙って頷いた二人に悠は緩く微笑んでから、話を当初に戻した。
「あずみがテレビの中に落ちたのは、誰かに突き落とされた、とかじゃないらしい。ただ売り場のケーブルに躓いた拍子に入り込んだんだそうだ。」
「じゃあ、あずみはこの事件とは直接関係ないってこと?」
「…もしかして、天城の事件で終わりなのか?」
陽介はそう言うが、俺としてはまだ事件が解決したとは到底思えない。
結論的に"雨の日はテレビをチェックする"ということになり、そこから話はだんだんと脱線していった。
賑やかに喧嘩をする千枝と陽介は勢い収まることなく、言い合い続けている。
雪子も帰ってしまった以上、もはやこの二人を止めるのは無理だ。というか、めんどくさい。
よし、帰ろう。
思い立ったら即行動だ。
悠は鞄を片手に立ち上がった。
すると、千枝が気付いたようで声をかけてきた。
「あれ?帰んの?」
「あぁ、あずみが菜々子と待ってるからな。」
何食わぬ顔でそう答える。
すると、二人の驚愕の声が教室内に響き渡った。
「ちょ、どういう意味だよ相棒!?確かに気を失った橘をおまえん家に連れてったけど…。相棒は"目が覚めた後に家に送る"って言ってたよな!?俺には今、"あずみは俺ん家にいますー"ってな風に聞こえたんだけど!?」
「うんうん!聞こえた!」
「その通りだけど?」
「「マジでー!?」」
再び驚愕して固まった二人にニヤリと笑いかけ、悠は動けぬ二人を置いて一人で帰っていった。
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