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「嘘なんかいらない!」

「嘘じゃないクマ!君は今やもうこの子の一部クマ。いや、この子自身なんだクマ。本人が君を受け入れたとき、君はこの子を守る力となるクマよ。」

「…"力"?」


ちとせは俯いて何かを考えると、ゆっくりとあずみの方へと向き直った。

その金色の目は、一瞬儚げに揺らいだように見えた。

「…私、ずっとずっと不安だった。あずみは死んだ私のことなんて忘れちゃうんじゃないか、って。だから、私があずみの中に止どまれるようになってからは、たまにあずみの体を使って周りの友達と距離を置くように仕向けたこともあった。…おかしいよね?あずみを独りぼっちにしないように、ってここに止どまってたのに結局独りぼっちにさせてたのは私だったんだ…。」

そっとちとせの手が優しくあずみの頬を撫でた。

「…ごめん、ね?苦しめることしか、できなかったよね…。」

頬に添えられた手は冷たく、僅かに震えていた。

それに気付いたあずみは、その手にそっと自分の手を合わせゆっくりと微笑んだ。


「…私、お姉ちゃんの存在を理由にしてみんなから逃げてた。本当に悪いのは自分なのに…。だからね、お姉ちゃんだけが悪いんじゃないの。えっと、上手く言えないけど…おあいこ、だよ?」


私はお姉ちゃん大好きだよ!


あずみはいつもの幼さを残した笑顔を浮かべた。

すると、ちとせは涙を浮かべながらも目を細めて笑い小さくありがとう、と呟いた。


「今度からは、あずみを守る力になるから…。」


そうちとせが言った刹那、少女の体は眩い金色の光に包まれた。

光がおさまったころ、そこにいたのは白銀の毛をもつ九尾の狐だった。

その狐はコーンと一鳴きすると、再び金色の光を纏い、今度は狐の面をつけ、美しい十二単の上に白銀の羽衣を纏った女性へと姿を変えた。


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