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いつもならば気にも留めないはずなのに、何故かそれだけは目について離れなかった。


話に夢中の菜々子達をそのままにして、悠はテレビの隙間に近寄った。



小さく見えるのは女の子の可愛らしいキャラがついたヘアピンだった。

身を屈ませて拾いあげていると、漸く悠の行動に気付いた陽介が不思議そうに寄ってきた。


「どうしたんだよ?」

「いや、これが落ちてて…。」

みんなにも見えるように手の平に乗せると、菜々子があっと声を漏らした。


「それ菜々子の…!この間、あずみちゃんに預けて忘れてたの…。」

「あずみ…って、もしかしてお前らのクラスの橘さん?」

「……え?あ、あぁ。」


あまりの事実に一条への返事さえできなかった。

陽介も同じらしく、一条への返事がワンテンポ遅れていた。



背筋に冷たい汗が流れていくのが、わかる。


まさか、まさか…。




信じたくないと思いつつも、陽介に視線をやる。

あずみが失踪したことを伝えていた陽介さえも顔を青くしているのだから、きっと考えていることは同じなのだろう。






失踪、ジュネスのテレビ、売場の落とし物…








「あずみは今、テレビの中…?」





呟いた後にテレビに視線を向けると、一度だけ画面がゆらりと揺らいだ気がした。


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