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ここ最近の稲羽市では、雨が数日続くと霧が出るという不可思議な現象が続いている。
そのせいで昨日の夜は霧で外が見えないくらいだった。
だが、今日の朝は天気がいいのも手伝って霧はすっかり晴れていた。
登校する生徒たちの顔にも笑顔が見えていた。
「…おひさまだ。」
そんな中、あずみは下がってきたリュックを背負い直しながら空を見上げた。
「今日は、いいことあるかな…」
ポツリと呟いた声は寂しげな余韻を残し、大空へと消えていった。
「…よし!がっこー、がっこー!」
一瞬眉を寄せた後、何事もなかったかのようにあずみは再びリュックを背負い直し、登校中の生徒に混ぎれるようにして学校へと向かった。
学校に着いたあずみは、教室に入るなり口を大きく開けたまま立ち尽くしていた。
「あ、おはよう。あずみ。」
「お、あずみ!今日は遅かったねぇ。」
「ゆきこ…。」
「え?あ、今日から雪子、学校来れるんだって!」
「ゆ、ゆゆゆ…」
「…ゆゆゆ?」
雪子を指差したままプルプルと震えるあずみ。
そしてついに限界を迎えたのか、あずみの震えがピタリと止まった。
「う、うあ〜!」
「「えぇーっ!?」」
いきなり駆け寄ってきたあずみはそのまま雪子へダイブ。
そしてそのまま、泣き出したのだ。
「ゆ゛ぎご〜っ!」
「あ、そっか…。心配、してくれたんだよね?」
雪子があずみを抱き留めながら尋ねると、肯定の代わりに雪子へ縋る手の力が強まった。
「ふふ、あずみ…ありがとう。」
千枝も、近くにいた鳴上と花村も、二人を暖かい目で見ていた。
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