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「いや〜、まさかこんな所で会うなんてねぇ!」
「ん〜、えっと…」
「あ、もしかして覚えてない!?」
酷いな〜、なんて言いながら男は頭をポリポリとかいて笑った。
「この間、堂島さんと一緒にいたんだけどなぁ。足立、足立透だよ。」
「あだち…。ん、じゃあアダッチーだ!私は橘あずみ!」
「あ、アダッチー?あはは、まぁいいか!よろしくね、あずみちゃん。」
足立はにっこりと人の良さそうな笑みを浮かべた。
しかしそれを見たあずみは、ぴたりと動きを止めた。
「あ、あれ?あずみちゃん、どうしたの?」
「…んーん。なんでもないよ…。」
あずみは足立の顔をじっと見つめた後、何もなかったかのようにネコ耳フードを揺らしながらにこりと笑った。
「じゃあ、またね。」
「ん〜、アダッチー!」
そのまま家の近くまで送ってもらったあずみは、去って行こうとした足立を呼び止めた。
「ん?どうしたの?」
「ん、あのね、いろいろ無理しちゃダメダーメよ?」
「……え?それ、」
「ほいじゃ、ばいばーい。」
驚いた表情を浮かべる足立にあずみは意味ありげに笑うと、そのまま家へと繋がる角を曲がっていった。
「……変な子。」
足立はあずみが曲がっていった角を見つめ、無表情で呟いた。
自宅へと帰ってきたあずみは、制服もそのままでソファーに倒れこんだ。
足立を見ていると、まるで自分を見ているような感覚に襲われる。
だってあの笑顔は、私と似てるから…。
偽りの笑顔を浮かべる者に偽りの笑顔は通用しない。
「ね?アダチさん…。」
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