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「………む、朝。」


のそのそと起き上がり服を着替える。

それから歯を磨いて顔を洗って…。

朝ご飯は食べない。

そしてお気に入りのネコ耳フードを着込み、リュックを背負って家をでる。

これがあずみの朝の日課だ。


「………いってきます、まま、ぱぱ、おねぇちゃん。」


誰もいない広い一軒家に小さな声が響き渡った。

返事はない。

あずみは寂しげに笑うと、そのまま背を向けるようにして玄関を開けた。







「……あれぇ?」

「…!…おはよう、あずみ。」

「なるちゃん!」


昨日一緒に帰ったときに教えてもらったあずみの家は、本当に堂島の家から数件先という近くだった。

転校初日にいきなり仲良くなった(あずみ曰くナカーマ)彼女は、雰囲気の幼さと可愛らしい笑顔、そして小さな背、加えてネコ耳フードが印象的な少女だった。

彼女は、どこか人を引きつけて離さない魅力を持っていると思う。

もちろん、そう言う俺も例外ではない。

せっかく家が近いのだから、という理由であずみと一緒に登校しようと家の前までやってきたのだ。

きっと彼女はあの幼い笑顔で笑うのだろう。

想像しただけで口元が緩みそうになる。

そのとき、家の玄関がガチャリと開いた。

出てきた…。

そう思って視線をあげると、目に移ったのはあずみの寂しげな顔だった。

一瞬、言葉を失ってしまった。

まさかそんな表情をしているとは思わなくて。

しかし、あずみは俺に気付くとすぐに笑顔を浮かべ、昨日と同じ調子で話し掛けてきた。


俺は不思議に思いながらも、あずみの調子に巻き込まれ、そのまま尋ねることはできなかった。

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