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キッと睨み付ける視線はそのままに、七恵は小牧に言った。
しかし、言った直後にすぐシュンと頭を垂れて項垂れた。
「あ…すいません…。ただの八つ当たりなんです…。」
例えば彼女が小動物だったなら、その耳と尻尾は元気なく垂れ下がっているのだろう。
小牧はクスリと笑って、持っていた夕飯のトレイを机へ置いて七恵の隣へと腰かけた。
「そんな負のオーラ撒き散らして、どうしたの?」
「実は…かくかくしかじかで…。」
ムニッ。
「ん?」
「す、すいません、ちゃんと言います…。」
適当にごまかそうとしたが、さすがは小牧さん。
黒い笑みとつままれた頬の痛みに七恵は観念して、重い口を開いた。
「…堂上さん、私のこと本当に嫌いなのかなって…。」
小牧は顎に手を当てると、彼特有の笑みを浮かべてどうして?と尋ねてきた。
どうして?と聞かれても返答に困る。
確かに今まではそんなこと気にしていなかったけど…。(いや、それも問題だが。)
こう毎日毎日アプローチしているのに全くと言っていいほど相手にしてもらえないんじゃ、嫌われてるとしか考えられない。
いつも素直に気持ちを伝えてるつもりなんだけどな…。
やっぱり嫌われてるのかな?嫌われて…るのかな?嫌われて…。き、きら…。
「うわぁーーん!!」
「えぇ!?雪片さん!?」
どうやら七恵は自己完結、もしくは自分で地雷を踏んでしまったらしく突然泣き始めた。
もはや小牧にもどうすることもできなかった。
いや、する暇もなかった。
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