page.2
「堂上教官ったら、本当は七恵のこと抱きしめてみたいくせに!」
「あ、アホか貴様は!」
「え!本当ですか!?堂上さん!」
「い、いや!違う!」
「え…違うんですか…?」
「あ!いや…って何を言わせるんだ馬鹿!」
コツンと頭を小突かれ、雪片が笠原からやっと離れた。
きっと笠原だったならば、コツンではすまされなかっただろう。
小突かれた頭をさすりながら雪片はニッコリと微笑んだ。そして、いつものあの言葉を口にした。
「堂上さん大好きです!」
「お前はいつもいつも…。」
「だって本当のことですもん!」
「あ〜はいはい、わかったからさっさと仕事に戻れ。」
しっしっ、と手で追いやれば頬を膨らませて帰っていく。
この一連の動作も会話も、毎日恒例のものだ。
しかし今日はいつもとは違い、雪片が去った後、笠原が腕を組んで何かを考え込んでいた。
こういうときは決まって良くないことを考えているに違いない。
ましてや、雪片絡みとなると嫌な予感しかしない。
ここは早めに切り上げようと踵を返し、宿舎へと帰ろうとした。
しかし、その足は笠原の言葉によって動きを止めざるをえなかった。
「実際のところ、教官は七恵のことどう思ってるんです?」
嫌な予感が見事に的中した。
[ 5/42 ][*prev] [next#]