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ひとしきり泣いて涙が落ち着いた頃、ようやく七恵は自分の状況にハッとした。
い、今、ど、堂上さんの腕の中にいいいる!!
心臓の音が聞こえてしまいそうで恥ずかしくて、そして自惚れてしまいそうで。
「あ、あの!もう、大丈夫です!」
慌てて両手を前に突き出して離れようとした。
けれど、力強い腕は七恵の体を離そうとはしなかった。それどころか少しだけ力が強まった気がする。
本当に、心臓が、破裂しそう。
ああ、自惚れてしまいます…。
堂上さんの顔なんて見ていられなくて俯こうとしたら、ふいに肩を掴まれ腕いっぱいの距離まで体を離されてしまった。
堂上さんの目が、真っ直ぐ私を捉えていた。
もしかして、
そんな期待が芽生えてしまう。
意識しなくても瞳が揺れてしまって、落ち着いたはずの涙がまた溢れてしまいそうだ。
そして、堂上さんは一つだけ小さく息を吐いてから、私に言った。
「俺はお前がいなくなるのが、怖い。それはもう痛いほどに思い知った。だから、あの日言えなかった言葉を言わせてくれ。」
もう、自惚れなんかじゃすまされない。
ほっぺが、熱い…。
「好きだ。」
「…………………はい!」
「七恵が好きだ。」
「っ………はい!」
「俺の、隣にいてくれないか?」
「…………っ……もちろんです!」
ああ、神様…。
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。
視界はぼやけてぐちゃぐちゃで。
ほっぺは熱くて真っ赤で。
泣いてるのか笑ってるのか、きっと自分でもわからない顔をしているんだろうけれど、そんなことは今はどうだっていい。
何度も救われました。
そして、恋をしました。
あなただけを見つめてきました。
そして、ずっとずっと夢に描いてきたことが、今日、叶いました。
「…大好きです、堂上さん!」
「馬鹿。…知ってるさ。」
「何度だって言いますからね!」
「わかったわかった。さぁ、帰るぞ。」
そう言うと、七恵は堂上を見上げて花のように笑った。
私は、まるでひまわりの様な恋をしました。
太陽だけを見つめ、恋をして、綺麗に咲き誇る。
花はまだ咲き始めたばかりです。
おわり
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