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それからは凄い勢いで、片付いていった。
天窓から侵入してきたのは特殊部隊で、見上げた時に見えたライトは正しく堂上さんだった。
「あとは我々が。」
「よろしくお願いします。」
ふぅ。と息をつく。
拘束していた犯人達を警察に引き渡した後、やっとまともに呼吸ができたかのような怠さが体を襲った。
よかった…。
柄にもなくホッとしている自分がおかしくて、少し恥ずかしい。
周りはバタバタと事後処理に追われている。そんな中、目線を助け出された人物に移すと、同僚である熱血バカが事後処理なんてお構いなしに、薄手の毛布にくるまれた小さな肩を抱きしめていた。
普段なら文句の一つも言いたい所だが。
「今日は特別な。」
泣きじゃくるバカはきっとあいつにまだ連絡していないのだろう。
しょうがない、と携帯を取り出して、もう一人の帰りを待っている人物に電話をかけ始めた。
「七恵!七恵ー!よかった…本当に…よかった!」
「うん、ありがとう…。」
「どこも怪我してない?痛いとこない?」
「だいじょぶだよ。ありがとう。」
郁の目は真っ赤に潤んでいて。
こんなに心配をかけてしまったことに罪悪感が芽生えた。
でもね、ちゃんと信じてたよ。
絶対来てくれるって。
心配かけて、ごめんね?
来てくれて、ありがとう…。
郁、もちろん麻子も、大好きだよ!
そう言うと、郁は泣きながら顔をくしゃくしゃにして笑ってくれた。
ゴホン!
郁と笑いあっていると背後から態とらしい咳が一つ。
振り返るとそこには小牧教官がいた。
ちょっとおかしそうに口元を緩ませている、小牧さんはこんな時でも通常運転だ。
少しホッとする。
「笠原さん。もうそろそろいいかな?事後処理を手伝って貰いたいんだが…。」
「あ、ああ!す、すみません、つい…!すぐに合流します!」
慌てて涙をぬぐって、また後で、とバタバタと郁が走って行くのを見送ると、小牧教官はまた一つ態とらしく咳をした。
「後は、ごゆっくり。…ね?」
去って行く小牧教官と入れ違いに堂上教官がこちらに歩いてくる。
ああ、そういうことかぁ。
やっと小牧教官の意図を把握した時にはドキドキと高鳴る胸が今にも破裂しそうだった。
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