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目の前を黒塗りのワゴンが走り去っていった。
「お兄さん、あのお姉さん助かるよね…?」
「…ああ、大丈夫だ。お守り届けてくれて、ありがとう。」
君の大きな勇気のおかげで、道が開けたんだ。
そう言うと、少年は不安げに瞳を揺らしながらもどこか誇らしげに母親の元へと駆けていった。
乗る間際に、確かに七恵は俺の姿を見つけて微笑んだ。
信じて、待ってます。
そう言われたようだった。
「ああ。すぐ行く。」
あいつは俺を信じて待っている。
確かな想いと決意を胸に。
堂上はざわめきが収まらない通りを抜けた。
あれから、何時間が経ったんだろう。
目隠しを外された目で小さな天窓の外を見やると日はとっぷりと暮れていた。
ここは町外れの倉庫らしく、どこかカビ臭い。周りにはボロボロの本達が散乱している所を見ると、昔はそういう関連の倉庫だったのかも。
いずれにしても女の子がいてはいけない場所だと思います…。
ちらりと後ろを振り返ると、犯人グループが苛立った様子で煙草に火をつけていた。
確か図書隊に対して何か要求を出していたはず。大方、本を焼き払えーとか資料を出せーとかそんな感じだったと思う。
実は深く聞いてませんでした。
だって、どんなことをしてもきっと図書隊は言いなりにはならない。
そして、絶対に堂上さん達が助けにきてくれる。
電話に出た玄田三監の指定した作業終了予定時刻まで残り僅か。
天窓を見上げて、私はゆっくりと目を閉じた。
バリィィィィンン
「こちらは関東図書隊だ!こいつはうちの顔なんでね、返してもらう!」
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