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「違うんです。辛くて、泣いてるんじゃないんです。」
本当に心配そうに頭を撫でるから、少しだけ罪悪感が芽生えてそう言った。
案の定、堂上さんはキョトンとしている。
ちょっとだけ可愛い顔。クスリ、と笑えばまたその顔はいつもの仏頂面へと戻った。
ああ、好きだなぁ。
そういう変化でさえ。
どうしても伝えたくなって、顔を上げた。
自分よりは幾つか上にある仏頂面を見上げて、私は口を開いた。
いつの間にか涙は止まっていた。
「堂上さんに、会えないのが悲しくて泣いてしまったんです。」
「お前はまた…!よくそういうことを恥ずかしげもなく言えるな…。」
「だって、本当のことを伝えたいんですもん。本気ってことを。」
いつまでも、このままじゃ嫌だから。
私は、本気なんですよ…。
しん、とその場が静まり返ってしまった。
どくどく、心臓がうるさい。
頭に置かれていた手がするりと撫でながら頬に滑り落ちてきた。
それだけでびくりと肩がはねてしまう。
堂上さんの指がゆっくりと涙の跡を撫でた。
え?え?
なんか、いつもの堂上さんと違う!
ああもう…心臓が爆発しちゃいそう…。
きっと顔は真っ赤になってるに違いない。
恥ずかしいのに、目がそらせない。
惹きつけられてどうしようもない。
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