page.2



「はぁ。つ、疲れた…。」

いろんな人に名前を呼ばれて、写真を撮られて、たくさんの視線を浴びて…正直心と体がついていかない。

完全にキャパオーバー。

人と接するのが今はちょっとだけ怖い。


麻子に言われるがまま雑誌の掲載を了承したが、まさかここまで影響が出るとは思わなかった。

麻子は上手に受け流しているけど、私はそういうことが上手くない。

このままではまともに業務もできないので、頼み込んで今日だけはと、地下書庫の整理へ逃げて来た。


「あーあ…。これじゃあ、堂上さんにも会えないなぁ。…やだなぁ。」


たくさんの人に好意を持ってもらえるってすっごく光栄なことだと思う。
それでも、私の心が向かうのはただ一人であって、その人に会えないのであればそれはやっぱり嬉しくない。


鼻の奥がつんとした。



やだなぁ、最近泣き虫だ。


ぐっと堪えて、本を手にとる。



ぐしゅり、と鼻を啜ってから本を抱えるとその本はすぐに自分の手元から離れて行った。


「ここにいたのか、七恵。」

「あ、あれ?堂上さん?」


ゆ、夢でも見てるのかな。
会いたいなんて思ったから。



「え、と、きゅ、休憩は?」


さっき郁からきたメールを確認すると、やはりそこには堂上班は昼休憩だと書かれていた。


「お前が大変な目にあっているのに、おちおち昼飯なんか食べていられないさ。」


そんな、優しい目で、見つめないでください。


口は何かを言いたくてずっとパクパクしてるのに、言葉が出て来ない。

伝えたいことがたくさん、ありすぎて。

そんな私の頭を堂上さんの手が優しく撫でた。


「一人で頑張るな。泣いていいんだぞ。」


この声と、この手に私はとことん弱いみたいです。



気付けばポロポロと涙が自然に零れていた。

[ 29/42 ]

[*prev] [next#]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -