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「すみません!あの、雪片七恵さん、いらっしゃいますか?」

「申し訳ございません。ただいま雪片はレファレンス中でございます。」





「あのー、今日は雪片さんはお休みですか?」

「雪片でしたら出勤しておりますが…。」

「さっきから探してるのに見当たらないんですよねー。あ、じゃあ柴崎さんはいますか!?」





「すみませーん。柴崎さんと雪片さんのツーショット撮ってもいいですか〜?」

「申し訳ございません。広報以外でのそういったことはお断りしております。」







「さ、さすがにここまでとは…。」

そう呟いたのは笠原だった。
やっとの思いで昼休憩に入ると、その周りも同じくうな垂れて深いため息をついていた。

あの小牧教官や手塚でさえも、表情に疲れが滲み出ていた。


実は今回、広報からの依頼で関東図書隊の二大アイドルが図書館密着取材なるもので掲載されたのだが、その反響が予想以上に凄まじく、今こうやって対応に追われているのだ。

直接二人に会いに来る者もいれば、電話で所在を尋ねる者もいる。通常の業務に重なり、これらの対処もせねばならないのだから皆の負担は倍だった。



郁はチラリと上司の机に視線を投げた。
机の上には噂の雑誌と幾つかの書類が、無造作に置かれていた。そこに本人は座っていない。

きっと心中穏やかじゃないんだろうなぁ。

この騒ぎを巻き起こした張本人は、この現場を見てきっとさぞかし楽しそうな笑みを浮かべるのだろう。



余計な手出しをするな、って言ったのはあんたでしょうが!



なんて考えながら郁は皆にせめてコーヒーを入れてあげようと席を立った。

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