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「要するに、あんた達はただ振り回されてただけってことよ。」
後日、改めて事の流れを聞いた柴崎は無情にも笠原を指差してそう言った。まるで最初からこうなることがわかっていたような口ぶりだ。
わかっていたのなら、そう言ってくれればいいものを。
「いやー、今回ばかりは私もそう思うわ。」
「ご、ごめんね、郁…」
隣で本当に申し訳なさそうに七恵が目の前で両手を合わせている。それでも表情は以前よりも晴れやかな顔をしているようだった。
「気持ちは変わった?」
「うん。やっぱり諦めるなんて、無理。だって、大好きなんだもん。」
「うんうん。それでこそ、本当の七恵だよー!」
キャー、なんて抱き締めてやればいつものように可愛らしいソプラノが笑う。
「でもさ、堂上教官と七恵が付き合い始めたんなら、そうやって抱き締めたり可愛がれるのも今のうちかもよ?」
ニヤリと笑う柴崎が悪魔に見える!!
そうか!きっと堂上教官のことだ!
今よりも更に突っかかってくるようになるに違いない!!
「そ、そんなことないよねー!七恵!」
七恵だって、堂上大好きっ子だ。無駄な抵抗だとわかってても聞いてしまう私。トホホ。
そんな笠原に七恵は笑顔で更なる爆弾を落とした。
「そうだよ!そんなことないよー!だって、まだ付き合ってないもん!」
「そうだそうだ!まだ付き合って…な…い…………え?」
「え………?」
「もー!ただ、ハーブティー飲みに行こうなーって誘ってくれただけなのにどうしてそうなるのかなぁ!でもでも、諦めたりしないんだ!これからまた頑張るんだから!」
そ、それって…つまり…
「て、天然どころじゃないよー!!」
「やぁだもぉー!!七恵最高ー!!」
「え?え?なんでー?」
笑い転げる柴崎と笠原を、七恵は不思議そうに見つめるのだった。
「へっぷし。」
「おや、風邪かい?いやこの場合、大方、笠原さん達が噂でもしてるんだろう。しかし、案外可愛いくしゃみをするんだね。」
「…うるさい。」
つづく
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