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空を見上げると、夕日と星空がまるで交わったようなそんな色をしていた。
ゆっくりと、それでもしっかりとした足で地面を踏みしめて歩く。
涙が出そうで。
でも、今は泣きたくなくて。
夕日の色が段々と消えていく空を眺めながら歩いた。
「早かったんだな。」
突然、前から声をかけられ足がピタリと前に進むのをやめた。
「ど、どうして、ここに…。」
ぐっと堪えて、声の方向に顔を向けるとそこには肩で息をする堂上の姿があった。
「探していた。雪片を。」
「私を…?」
何故?探す理由なんてどこにある?
まだ制服のままということは、着替える余裕もなく私を捜してくれていたということなのだろうか。
もう、ほんと…。
「笠原に、店の場所を聞いて、だな。その、まさかこんなところを歩いてるとは思わなかった。」
馬鹿だなあ。
「…途中で、帰ってきちゃったんです。」
この気持ちをしまうことなんて、初めからできやしなかったんだ。
「ハーブティーの美味しいお店で、とってもとっても美味しかったんです。」
声が、震えちゃう。
「お料理のメニューも、美味しそうなものばかりで…。でも、頭の中は堂上さんでいっぱいで。これ、好きそうだな、とか。このハーブティー、堂上さんはどうかな、とか。」
伝えたいこと、あるのに。
頭がこんがらがってて、何から言えばいいかわからない。
それでも堂上さんは黙って私の話を聞いてくれていた。
優しい目が、私を写している。
「ど、堂上さんと、行きたかったぁ。うっ…一緒にっ、お出かけするのはっ、堂上さんとが、よかったぁ…!」
涙が溢れて溢れて止まらない。
申し訳なさと罪悪感、迎えにきてくれた嬉しさと、私を写してくれた瞳。
その全てが引き金となって涙が溢れる。
そっと頭に手が置かれた。
そして遠慮がちに反対の手が背中に回って、ゆっくりと七恵の額が堂上の胸へと引き寄せられた。
「え、あ…。」
「行こう。今度は二人で、そのハーブティーを飲みに。だから、泣くな七恵。頼む。」
「…はい。」
初めて、名前を読んでくれた。
初めて、抱きしめてくれた。
握りしめた堂上さんの制服がシワにならないかとか、そんなことを気にする余裕はなくて。
ただ、嬉しさで頭が爆発しそうになるのを堪えるしかなかった。
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