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そっか。
あれからもう1年経つんだなぁ。
私はこの1年、何か変わることができたのかな。

薄く色づく茶色に小さく波紋が広がる。

一度砂糖を掬い入れると、それはかき混ぜる前に静かに溶けていった。
こんな風に私も溶けていけたら…なーんてね。

自嘲気味に笑ってそんなことを考えていたら、急に名前を呼ばれてハッとした。

「あの…僕の話、聞いてました?」

「え…えと…えと…う、すみません…」

「いえ、いいんですよ!僕が無理に誘ってしまったので。どうです?ここのハーブティー。」

「あ、すごく…美味しいです。」

途端に周りの景色に色がつく。

いけない。そうだった。
今はこの人とお食事中だった。
お話の途中で上の空になるなんて、なんて失礼なことをしてしまったんだろう。


彼の名前は長谷さん。
同じ業務部所属で私をいつも気にかけてくれる人だ。
そしてここは、とあるレストラン。
図書館からも然程離れていないここは穴場なのか、お客さんもそんなに多くはなく静かな空間だ。
食前にお願いしたハーブティーの優しい香りが、そっと胸に隠していた罪悪感を撫でていく気がした。

そろりとハーブティーに落としていた視線をあげる。すると、穏やかにこちらを見つめる視線とぶつかった。また咄嗟に視線をハーブティーへと落とす。

一度感じてしまったものはなかなか消えてはくれない。ぶくぶくと徐々に膨れ上がる罪悪感をどこかに流したくて、ハーブティーを口元へ運んだ。


あ、美味しい。
鼻から抜ける香りも味わいもなかなかのものだった。

堂上さんはこういうハーブティー好きかな?



そこでまたハッとする。


諦める、って。
頑張る、って。

そう、決めたのになぁ。


こんな時でも考えるのは堂上さんのことばかり。


恋をすることも、諦めることも、何もかもが初めてのことばかりで、どうしたらいいかわからなくて。

ちょうどいい、というようにこの人に逃げてしまった。


やっぱりこのままじゃ…。




もう一度ゆっくりと顔をあげる。
また、穏やかな視線とぶつかった。

今度は、視線を逸らさなかった。




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