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「…む、無理だっ!!」

実は5分くらい自力で何とかしようと試みてちゃったりしちゃったりしたのだけれど…

あと1時間かけてもこれは取れそうになかった。

諦めて人を呼ぼうか。

でも、改めて周りを見渡すとここは全くと言っていいほど人通りがない。
カウンターまで呼びに行けばいいのだろうが、今ここを離れたとしてこの書籍の場所まで覚えていられるだろうか不安だったのもあり、なかなか足を踏み出せないでいた。

すると、そこへ。
その声はかかった。


「失礼。こちらの本でよろしいですか?」

すっと横から出された腕に目を奪われてしまった。
その腕は確かに自分のお目当ての本を抜き出し、こちらへと差し出してきた。

「あまりにも一生懸命でしたので、ついお声をかけるのが遅れてしまいました。」

ニコリと笑うそのスーツの長身の男は大きなカバンを床に置くと、両手で本を持ち直してこちらへ向き直った。


「へ?あ、あの…ありがとうございます!助かりましたー!」

「いいえいいえ。」


人当たりの良さそうな笑みを浮かべる男は、少し周りを伺い、再びこちらに顔を向けた。

「お一人ですか?」

「今日は一人です。」

「そうですか。では、そちらの本持ちましょうか?あなたのような女性には重すぎるでしょう?」

なんて親切な人なんだろう…。

「いえ、そこまでは…」

「ついでですから。」

「ついで…?」

「はい。ついで、です。」


そう言われてしまっては、お願いせざるを得なかった。



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