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「失礼。こちらの本でよろしいですか?」


そう、あれは一年前のことでした。
大学4年の夏、図書隊員を目指す郁と一緒に、図書館が近い親戚の家に試験対策合宿なるものをした時だった。

私、雪片七恵はその日一人で図書館へと来ていた。


郁ったら、夜中にアイス食べすぎてお腹壊すなんて!


合宿初日からはしゃぎすぎた郁は、今お家のベッドの中で魘されている。
当初は図書館でする勉強もそうはいかなくなり、仕方なく本を貸りて家で勉強することになったのだ。

親戚の叔母ちゃんにも、せっかく武蔵野第一図書館が近くにあるのにねぇ、なんて言われてしまった。


郁が図書基地見たいって言ったのに!


ぷんぷん、と怒りながらも七恵は試験対策になりそうな書籍を集めていく。

よーし、大体揃ったぞー!
今日はこれくらいにしよっかな。
あとは…あ、あの本だ。


さすがに6冊も分厚い本を一人で持つのはキツかったみたいだ。ヨロヨロと足をもたつかせながら、お目当ての本棚まで歩く。

そして本棚のところまで着いて、七恵は深くため息をついた。


あーあ…郁の馬鹿。


遠い所からでは分からなかったけれど、その本は自分の身長よりも遥か高い所へしまわれていた。
きっと郁ならば取れる高さ。

図書館は好きだ。本がいっぱいあるし、静かで自分の世界に浸れる。

でも、こんな風にお目当ての本が取れなかったりする所だけ苦手だ。



「んっしょ。」

七恵は持っていた6冊を静かにその場に置き、腰に手を当てた。


「よっし。頑張るぞー。」

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