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「は!?嘘だろ!?」

「なんであたしが嘘つかなきゃいけないのよ。本当なんだってば!」

「いや、だって…雪片が堂上教官のこと諦めるって…。」

すかさず笠原が口を塞いだ。

「ば、馬鹿!もっと小さい声で言いなさいよ!!堂上教官に聞かれたらどうすんの!」

慌てて笠原が周囲を見渡すが、その倉庫には他の人も見当たらず、ほっと息をついた。

笠原の隣に立つ手塚は尚も渋い顔をしていた。

「あの二人、とっくにくっついてると思ってた。」

「明らかに両思いなのにねぇ。」

「…なんで雪片は諦めるって言い出したんだ?」


そう手塚に言われ、笠原は昨日の七恵の様子を思い返した。
あの時の七恵は、笑っているけどどこか切なそうな顔をしていて、まるで自分のことのように胸を締め付けられた。


「あの子、堂上教官が初恋なんだって。ほら、よく言うじゃない?初恋は実らない、って。」

「げえ!そんなことで、諦めちまうのかよ!」

「ちょっと!声!」

手塚の珍しく大きな声に近くにいた業務部の制服を着た男の人が振り返る。

あれ?あの人どこかで…?

どこかで見覚えのある顔だな、と思いながらも笠原は苦笑いを浮かべてから、更に声を潜めて話し始めた。
注意された手塚は何事もなかったかのようにしれっと本の整理をしていて、少し腹立たしい。

「まあ、理由はそれだけじゃないみたいなんだけどさ。あの子が教官のこと好きになったの1年前よ?1年もアタックしてるのに靡かないなんて、そりゃ心が折れるでしょ。」

「1年前?ってことは、図書隊に入隊する前からってことか?」

「図書館で痴漢にあった時に助けてくれたんだってー。」


ふーん、と相槌を打ちながらも手塚のテキパキと本を整理していく手は止まらなかった。

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