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「二人とも、聞いてくれる?」
それから一時間後のことだった。
もうとっくに柴崎のお説教タイムは終わっており、二人仲良く談笑している時に七恵はようやく口を開いた。
そもそも良く考えてみれば、柴崎は普段こんなにネチネチと説教をするタイプではない。
恐らく七恵に考える時間を与えるための芝居だったのだろう。
「もちろん。七恵が自分で考えて出した答えだもの。聞かせてちょうだい?」
柴崎の優しい声がゆっくりと室内に溶けていった。
「私ね、本当に堂上教官のこと…ううん、堂上さんのことが好き。でもね、今まで恋ってものをしたことがなかったからどんな風にアピールしていいのかわからなくて…。」
「え!!七恵、恋したことないの!?」
「ちょっと!あんたは黙ってなさい!」
「自分なりに一生懸命頑張ってきたつもりだったの…。でも、どんなに頑張っても堂上さんには相手にしてもらえないし、逆に子供扱いをされてるんじゃないかな…って。嫌われてるのかな、とか悪いことを考え始めたら、止まらなくなっちゃった。」
七恵はえへへ、と笑ってはいるものの表情は暗い色のままだ。
「それでね、…。」
次に続いた言葉は笠原、柴崎でさえ予想外のものだった。
「この恋は、諦めることにする!」
「ええええええ!?!?」
つづく
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