ねんねんころり

※恋仲

暖かな日差しが降り注ぐ昼下がり。例の木の下で穏やかに過ごす。特に何をするわけでもなく話すだけだが、この時間が俺は好きだ。
話題は会えなかった間にこんなことがあった、あんなことがあったというなんてことのない話。特に盛り上がるのはやはり三兄弟の話。あいつらは毎日なにかをやらかすおかげで話題が尽きることはない。桜子は至極楽しそうに笑う。

「それで最近、空丸の部屋がぼろぼろになった天火人形でいっぱいになってるんだ。」
「可愛いなぁ、お兄ちゃんを越えるために必死なんですね。」
「可愛いって言えるのは桜子くらいだよ。それを見た宙太郎が悲鳴あげたんだから。」
「だって、ふふっ。あの小さかった二人が一人で動けるようになったってだけでも嬉しいんです。何をしても可愛いですよ。」
「……宙太郎が糞を嬉々として持ち歩いてても?」
「その年頃の男の子は普通じゃないんですか?」
「少なくとも俺はしなかった。」

桜子の中の男の子とは一体どんなものなんだ。昔、彼女の身近にいたのが天火と犲の二人だったか。彼女の中での少年の基準が天火だとすればそれは大きな間違いだ。
一応、自分の名誉の為に否定する。嫌がらせの手段として使うことはあっても嬉々として持ち歩くことはなかった。

気が抜けていたせいだろうか。ふいに喉の奥から込み上げてきたものを桜子に悟られぬようそっと口元に手を当て、小さく欠伸を漏らす。そういえば、しばらくまともな睡眠をとっていなかったな。
ちらりと横を見ればしっかりと宝石のように輝く瞳に己の姿が映し出されている。バレないようにしていたが、彼女にはお見通しらしい。

「……眠いんですか?」
「いや、ちょっと日差しが暖かいから気が抜けただけ。」
「寝ましょうか。」
「桜子は眠いの?」
「いえ、私はあまり」
「じゃあ勿体無いし起きてるよ。本当に、ちょっと気が抜けただけだから。」
「……。」

ぐらりと身体が傾いたのはその直後のことだった。
桜子に引っ張り倒されたらしい。まさか彼女に体勢を崩されるとは。如何に彼女と過ごしている間、自分の気が抜けているのか思い知らされる。
忍としては失格、しかし恋人としては正解。既に頭は柔らかな膝の上にあった。起き上がろうとすれば桜子に頭と肩を押さえつけられ、そのまま寝転ぶしか手段はない。無理矢理起き上がることもできるが、そうまでして抵抗する気もない。

「……桜子、本当に大丈夫だから。」
「寝てください。どうせまた寝てないんでしょう?そんな状態だと心配で話に集中できません。」
「……そっか、ごめん。じゃあ、お言葉に甘えようかな。足が痺れたら遠慮なく叩き起こして。」
「叩き起こしはしないですけど……分かりました。頃合いになれば起こします。」

少し気を使いながら、大人しく桜子の膝に頭を預ける。柔らかな膝も、頭を撫でる手も、恐ろしいほど心地が良い。
そういえばいつの頃だったか、こうして優しく頭を撫でてもらった記憶がある。俺が殺してしまった、優しいひと。最後に笑いかけてくれた、大切なひと。今でもその顔は鮮明に脳裏に焼き付いている。人が焼ける、その匂いも。

「おやすみなさい、白子さん。」
「おやすみ、桜子。」

襲ってくる眠気に抵抗せず瞼を閉じる。
彼女の匂いが脳まで染み渡るようで、酷く安心した。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -